東京大学 海洋アライアンス 日本財団

Okinotori-shima and Small Island Program沖ノ鳥島・小島嶼国プログラム

沖ノ鳥島や小島嶼国を地球温暖化による水没から守る

沖ノ鳥島(東京都提供)

沖ノ鳥島(東京都提供)

東京都小笠原村に属する沖ノ鳥島は、日本の最南端に位置しています。東西4.5キロメートル,南北1.7キロメートルのサンゴ礁(卓礁)でできており、太平洋に孤立しているため、その周囲に日本の国土面積より広い40万平方キロメートルの排他的経済水域を持つ、国益上重要な島です。干潮時には島の大部分が海面上に姿を見せますが、満潮時には、「北小島」「東小島」とよばれる二つの高まり以外は海面下になります。国際法上の島の定義「高潮位時も水面上にある自然の陸地」にあてはまる部分はこの北小島と東小島ですが、地球温暖化にともない今世紀末に予測される海面上昇(30~110センチメートル)によって水没の危機にあります。海面上昇による国土の水没は、標高1~2メートルの環礁国と共有する課題です。

本プログラムでは、東京都の委託事業として、沖ノ鳥島と南鳥島に関わる論文、報告書、記事、学会要旨、書籍と、地形図、海図、水路誌を収集して、データベースとして,東京大学総合研究博物館のウェブデータベースの、下記URLにおいて公開しています。
http://umdb.um.u-tokyo.ac.jp/DChiri/okinotorishima_minamitorishima/index.php

資料、地図の9割は電子化して、同博物館に登録されています。そのうち公開可能なものは、公開したデータベースから直接入手することができます。

ツバル・フナフチ環礁フォンガファレ島

ツバル・フナフチ環礁フォンガファレ島

沖ノ鳥島や環礁の島々では、サンゴ骨格が積み重なったサンゴ礁の土台の上に、細かいサンゴ礫(れき)や有孔虫砂(ホシズナ)が打ち上げられて、満潮時でも沈まない島がつくられています。島の定義は「自然の陸地」なので、沖ノ鳥島を人工的に造成しても、それは「島」とは認められません。海面上昇による水没を避けるには,島が本来持っていた自然の復元力を助けて高さを維持する、新しい生態工学技術の開発が欠かせません。

環礁の島々を維持する生態工学技術は、サンゴの種苗生産、生態系・地形規模のサンゴ礁の保全・修復と成長促進、サンゴ砂礫と有孔虫砂の移動・集積、集積した砂礫の固化など、様々な要素技術からなります。これらの技術開発を島の維持という目的に集約することが必要です。

環礁国家を取り巻く様々な問題群

環礁国家を取り巻く様々な問題群

この目的を達するため2006年、本プログラムの前身である「沖ノ鳥島勉強会」を立ち上げ、技術開発に関わる議論と情報交換の場を設けました。その取り組みのなかで、この問題は、環礁の水没に対する理学・工学的なアプローチだけでなく、島の国際法上の位置づけ、地球温暖化による白化、海洋酸性化によるサンゴ礁の溶解、小島嶼(しょうとうしょ)国の脆弱性など環礁を取り巻く問題群、さらには太平洋における安全保障上の脅威など、広く政治、社会、経済的な領域に及ぶことがわかりました。2008年からは発展的に改組した「小島嶼国研究会」として海洋アライアンスの支援を受け、産官学のセクターを越えた情報交換も進めてきました。

本プログラムのミッションは,以下の通りです。

(1)沖ノ鳥島の生態工学的維持技術の開発を目指します。サンゴの増殖によって、海面上昇に対して低潮線(リーフ)の高度を維持するとともに、サンゴ礫の集積,固結による島の保全をはかります。

(2)構築した技術を、沖ノ鳥島と同じく海面上昇による水没の危機にある環礁小島嶼国家(マーシャル諸島共和国、ツバル、キリバス,モルジブなど)に、国際支援のもとで技術移転を進めるための方策を検討します。

(3)日本が主導して、環境を前面にすえた太平洋環境安全保障体制を構築するグランドデザインを提示し、省庁とセクターを越えた情報交換と議論の場を提供します。

プログラム代表者 茅根 創 教授 理学系研究科
メンバー 八木 信行 教授 農学系研究科
メンバー 田島 芳満 教授 工学系研究科
メンバー 杉本 史子 教授 史料編纂所
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