東京大学 海洋アライアンス 日本財団

TOPICS on the Ocean

シンポジウムレポート

【国際シンポジウム】震災復興過程に見る人と海の将来像(2012/5/14-15)

海洋アライアンス国際シンポジウム

「震災復興過程に見る人と海の将来像」

【活動報告】東京大学海洋アライアンスでは,5月14日(月),15日(火)にかけて,国際シンポジウム「震災復興過程に見る人と海の将来像」を開催しました.

日本の報告者からは震災被害の現状と課題,そして今何が必要であるのかについて報告されました.2011年3月に発生した震災から1年が経過しましたが,水産業の復興が思うように進んでいない場所がある点が議論になりました.特に,地盤沈下などにより加工場の復旧が遅れている場所では,水産物の水揚げも回復しておらず,水産業が加工・流通・販売をあわせてトータルな産業である点がこの震災で改めて確認できました.

シンポジウムの様子
シンポジウムの様子

インドネシアおよびインドの報告者からは2004年のスマトラ島沖大地震での津波被害からの復興について報告がなされました.そこで得られた教訓は,被災者の当事者の意見を尊重して復興計画を立てる点です.インドネシア津波の場合,復興での達成課題について,外国人が考える優先順位と,被災地の当事者が考える優先順位が異なる場合が見られました.例えば,被災前,漁業者には貧富の格差がありました.

シンポジウムの様子
シンポジウムの様子

外国人は,復興後には漁業者の平等性を確保しようと考え,全ての漁業者に漁船を供与した地域がありました.その結果,必要以上の漁船が構築され,数年後には漁業資源が減少するという副作用を招きました.日本の場合でも,被災地に住居していない外部者が主導して復興計画が策定される場合は,被災地で暗黙知として長年培われてきたシステムが崩れ,復興後に思わぬ副作用が出る危険性も注意喚起がなされました.

シンポジウムの様子

また米国の報告者からは,沿岸災害のリスク管理の視点から被害を最小化するための予防のあり方について報告されました.津波などの災害原因そのものが発生することはコントロールできませんが,より良い予測・防災体制の構築が可能である点について,理解が深まりました.

両日で述べ116名がシンポジウムに参加し,パネルディスカッションと質疑応答を通じて,報告者と会場の間でも積極的な意見交換がなされました.

【日時】1日目:平成24年5月14日(月)9:30~17:10
    2日目:平成24年5月15日(火)9:30~12:20
【会場】東京大学 弥生キャンパス フードサイエンス棟2F 中島董一郎記念ホール
【主催】東京大学 海洋アライアンス 
【助成】日本財団
(このシンポジウムは,海洋アライアンスと日本財団が連携して進める人材育成と研究活動「総合海洋基盤(日本財団)プログラム」の一環として開催したものです.)

シンポジウムの様子

【プログラム】

(テーマをクリックすると報告資料を御覧いただけます)

2012年5月14日(月)
9:30~

開会:主催者挨拶

浦 環 東京大学教授

報告:東北3県の水産業被害とその対策

宮原正典 水産庁次長

報告:FAOによる震災対応について

Lahsen Ababouch FAO水産局政策部長

報告:大槌町の水産業復興支援の現状と課題

川口博美 赤浜の復興を考える会会長
千田良仁   前・東京大学特任講師

13:30~

報告:最も必要なものは何か: 漁村復興のプロセス

黒倉 壽 東京大学教授

報告:沿岸災害復興における地方組織の役割

John Kurien インド・トリバンドラム開発センター・フェロー

報告:インドネシア・バンダ・アチェの経験

M.Adli Abdullah インドネシア・アチェ州シャークワラ大学教授

報告:インド洋大津波におけるベンガル湾諸国の対応

Yugraj Yadava インド・ベンガル湾プログラム局長

2012年5月15日(火)
9:30~

報告:沿岸災害における事前マニュアルの限界

Robert Thompson 米国・ロードアイランド大学教授

報告:日本のふるさと創りから学ぶ東北復興

Tim George 米国・ロードアイランド大学教授

パネルディスカッション

モデレーター:野村一郎 前・FAO水産局長
パネリスト:各報告者

閉会の挨拶

John Kirby ロードアイランド大学教授

【問合せ先】
  東京大学 大学院農学生命科学研究科
  農学国際専攻 国際水産開発学研究室
  八木信行・大石太郎
  電話:03-5841-8115

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