東京大学 海洋アライアンス 日本財団

TOPICS on the Ocean

シンポジウムレポート

【シンポジウム】Regional Applications and Nexus of the Ocean Health Index (2015/7/1-2)

2015年7月1−2日(1日:国際シンポジウム,2日:専門家ワークショップ),東京大学大学院農学生命科学研究科フードサイエンス棟の中島ホール(シンポジウム)及び会議室(専門家ワークショップ)において,東京大学海洋アライアンスとコンサベーション・インターナショナルが主催した国際シンポジウムが行われた.学生,研究者,省庁,企業,NGO,メディアなど,国内外から70名を超える参加を得て,広く人と海の関係性の評価について,多様な視点から活発な議論が繰り広げられた.

古谷研教授(東京大学理事兼副学長)による開会挨拶および海洋アライアンスの紹介,ならびに日本財団への謝辞等に続き,7名の基調講演が行われた.海洋の物質循環や生態系機能に関する最新の海洋学的知見に基づいて海を区分けし海洋生態系サービスを持続的に利用していくためのガバナンスのあり方を探求することを目的に実施されている研究について,齊藤宏明准教授(東京大学大気海洋研究所)より研究成果が報告された.ロバート・ブラジアック氏(東京大学大学院農学生命科学研究科)から,海洋生態系サービスの価値に関する一般認識について,日本及び米国で実施したアンケートの調査結果を紹介があった.続いて,あん・まくどなるど教授(上智大学大学院地球環境学研究科)から,全国各地の沿岸コミュニティにおける様々な事例をもとに,日本の里海と呼ばれる沿岸地域の現状と課題について,ローカルとグローバル両方の視点からの発表があり,それを受け,田中丈裕氏(NPO法人里海づくり研究会議)からは,岡山県日生町での多様な主体の協働による「アマモとカキの里海」再生について,長年の現場経験を踏まえお話いただいた.海洋生態系サービスへの依存度が高く,その持続可能な利用が必須の課題となっているモルディブからは,フセイン・シナン氏(モルディブ漁業農業省)およびアハメッド・リヤズ・ジャウハリー氏(モルディブ漁業農業省海洋研究センター)の両氏から,同国の沿岸漁業管理の取組みに関して紹介があった.クリス・ゴールデン氏(ハーバード公衆衛生大学院)は,栄養学的視点から見た漁業の重要性およびそれに影響をもたらしうる地球環境の変化について検証する研究プロジェクトについての紹介を行い,最後にエリック・パチェコ氏(コンサベーション・インターナショナル)からは,本シンポジウムの中心的テーマであるオーシャン・ヘルス・インデックスについて,その概要とこれまでの成果,課題,可能性について説明があった.

基調講演に続き,八木信行准教授(東京大学大学院農学生命科学研究科)のファシリテートのもと,パネルディスカッションが行われた.ディスカッションに先立ち,奥田直久氏(環境省生物多様性地球戦略企画室)およびイヴォーン・ユー氏(国連大学サステイナビリティ高等研究所)から,生物多様性や生態系の状態を図る指標策定に関する環境省の取組みと,石川県能登半島の里山・里海に関する国連大学を中心とした取組みについてそれぞれ紹介いただいた.パネルディスカッションでは,立場の異なるパネリスト同士,また会場からも,活発な質問や意見が飛び交った.

パネル討論の様子.

パネル討論の様子.

以上の議論を通じて,国レベルでの評価から始まったオーシャン・ヘルス・インデックスが,地域レベルのアセスメントを実施する上で有効かどうかについての議論は収束しなかったものの,各ステークホルダーが自分たちの海の現状について評価しようというプロセスそのものが,立場を超えた多様な主体による協働や各種の合意形成を生むきっかけになるのではないかという共通認識が生まれたほか,社会科学と自然科学の両方の視点を併せ持つこと,活動の持続性を担保する現場のリーダーの重要性など,多くの重要なポイントが抽出された.

また,翌日の専門家ワークショップは,限定したメンバーが参加し更に分野横断的な議論を深める場として開催した.ここでは,前日の議論の内容を総括した上で,今後の関係各機関の研究協力などについて更に議論を行い,調査課題の抽出,研究体制の構築などを行った.

報告書はこちら:OAW15-02報告書.pdf

シンポジウムレポートトップに戻る