三陸水産業・漁村・漁港復興に向けた産学官連携支援プロジェクト
背景
地震と津波の影響を受けた三陸地域においては、経済的にも社会的にも中核の産業であった水産業が壊滅的な打撃を受けた。このため、現在、政府や市町村自治体、専門家等が、復興に向けてのビジョン、またそれに向け「ひと・もの・かね」を支援するプログラムを検討している。この中では、現場のニーズを集約し、これらを短期、中期、長期に分類した上で、可能な支援策を実施することが重要な課題となっている。その際、特に、被災地で必要となるニーズと支援対策をうまく仲介・マッチングさせて、有効かつ効率的な支援を達成することが重要となっている。
1.目的
2011年度内においては、海洋生物資源利用を中心とした復興作業に貢献することを目的の1つとして、活動を実施する。三陸の被災地漁村・水産業を対象として、農学生命科学研究科の教員を中心に漁船の手配、漁場の瓦礫処理、市場、流通、加工機能の整備等のコーディネートを行う。また、ボランティアスタッフを海洋アライアンスの講義履修生等から公募し、基礎的な研修を行った上で、現地に派遣し、特任教員の活動補助を含めた地元への支援などを行うとともに、その他、水質の調査なども必要に応じ現地の水産試験場などと協力して実施する。
2.プロジェクトの作業概要
1.大学・研究期間・行政・水産関連企業等との連携体制の構築
海洋アライアンス、水産庁、全漁連、水産学会、水産・海洋系大学等、産学官のステークスホルダーを集めた研究会を設置し、ニーズに応じた支援対策の検討、既存の支援プログラムとのマッチング等について検討する。
2.被災地における支援の実施
2-1.被災地水産業の現状および支援ニーズの把握
- a.被災地の現地調査を行い、被災地水産業の現状および支援ニーズの把握およびアセスメントを行う。
- b.現地のニーズ(水産関連企業、市町村等)を把握した上で、必要に応じて、学生や若手研究者(ボランティアスタッフ)を公募し、基礎的な研修を行った上で、現地に送り込み、復興支援プロジェクトを実施する。8月頃から現地の市町村、漁業関係者の手が回らない技術的サポートを行う。
2-2.ニーズに応じた支援のマッチング及びコーディネート
漁船の手配、漁場の瓦礫処理、市場、流通、加工機能の整備等に対して、現地のニーズと国等の支援スキームや専門的知見、技術的アドバイスなどとのマッチングおよびコーディネートを行う。
3.国際シンポジウムの開催
2012年3月に、海外の国際機関、政府の専門家等を招聘し、水産業復興に関する日本の取組と、海外の事例報告(インド津波など)を行い、復興に向けた対策を検討する国際シンポジウムを開催する。
4.海外事例調査
支援対策、復興計画等に関する知見を得るために、津波による震災を経験している海外の事例(インド、チリ、インドネシア等)を調査する。
5.活動の広報とネットワーク化
WEBページ等を作成し、支援プログラム、活動の広報を行うとともに、現地と支援専門家とのネットワークの構築を図る。
3.実施体制
- 【担当教員】
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- 黒倉 寿 (農学生命科学研究科 教授)
- 八木信行 (農学生命科学研究科 准教授)
- 古谷 研 (農学生命科学研究科 教授)
- 千田良仁 (農学生命科学研究科 特任講師)
- 福代康夫 (農学生命科学研究科 アジア生物資源環境研究センター 教授)
4.実施状況
8月27日、岩手県大船渡市の北里大学三陸キャンパスで行われた大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センター研究集会に、千田・黒倉が参加し、現地関係者と情報交換を行った。
9月15日には、千田・黒倉が大槌町に行き、現地の漁業者と意見交換を行い、具体的な復興支援体制の構築にむけた検討を行っている。
10月24日に、千田が海洋アライアンスの学生と共に、宮城県漁協および石巻魚市場(石巻市)へのヒアリング調査を行い、復興の現状やこれからの支援ニーズに関して情報交換を行った。