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沖縄県竹富町を例とした島嶼(とうしょ)における海洋保護区のあり方の検討

カテゴリ 島嶼(とうしょ)における海洋保護区のあり方と意義
掲載日 2013.12.17
東京大学名誉教授 福代康夫

1.沖縄県竹富町の取り組み

竹富町の位置

図1 竹富町の位置(竹富町HPより) [図を拡大]

 沖縄県竹富町は、西表島及び日本最南端の有人島である波照間島をはじめ、それぞれが特色のある9つの有人島と周辺の海域を生活圏とする島嶼(とうしょ)型海洋自治体である(図1~8参照)。世界有数のサンゴ礁を有する沖縄県竹富町では、わが国の地方公共団体として初めて「竹富町海洋基本計画」を策定し、島嶼における海洋環境保全・資源保護と町の振興発展との持続可能な関係確立の先駆的役割を担っている。竹富町海洋基本計画では全国に先駆け、独自に「竹富町版海洋保護区(Marine Protected Area: MPA)」の設定を目指した取り組みを始めており、本事業ではその取り組みの進捗にあわせ、島嶼におけるMPAに関するケース・スタディとして実態を調査した。

図2 竹富町 西表島 白浜地区周辺の海

図2 竹富町 西表島 白浜地区周辺の海

図3 西表島と由布島をわたる地点の水牛。観光名所のひとつ

図3 西表島と由布島をわたる地点の水牛。観光名所のひとつ。


図4 竹富島ビジターセンター。島の自然環境、歴史、文化などが学べる

図4 竹富島ビジターセンター。
島の自然環境、歴史、文化などが学べる。

図5 八重山漁協での競りの様子

図5 八重山漁協での競りの様子


図6 黒島で放牧されている牛。人口約200人の島で肉用牛は約3,000頭飼われている。

図6 黒島で放牧されている牛。
人口約200人の島で肉用牛は約3,000頭飼われている。

図7 西表島西部地区での漁業の様子(1)

図7 西表島西部地区での漁業の様子(1)


図8 西表島西部地区での漁業の様子(2)

図8 西表島西部地区での漁業の様子(2)

2.海洋保護区(Marine Protected Area: MPA)をめぐる課題

 一般に、どのような海域にも一律に有効なMPAの定義は存在せず、長くこの問題に取り組んできた国際自然保護連合(IUCN)1)は、保護区の管理カテゴリーを設け、管理目的を明らかにした上でそれらのバランスのとれた配置を求めている。すなわち、MPAの設定は、対象となる海域やそこでの利用の特徴などを勘案して、適材適所に設定することが重んじられている。また、海洋保護区を設定するだけでは問題の解決にならず、いかに効果的な管理・実行を確保するかが国際的にも課題となっている。

3.本研究の取り組みと今後への期待

 本研究チームは、竹富町役場の全面的な協力を得て、同町を事例とすることにより我が国の島嶼におけるMPAのあり方を調査し、より実行性の高い離島型MPAの設定・管理のあり方を検討した。MPAに関する議論においては、国や県、町といった行政機関と、そこに科学的アドバイスをするべき調査研究機関だけでなく、MPAの実際の管理において参加や協力が期待される漁業者、観光事業者、海運事業者、NGO、住民等が取り組みの初期段階から参画できるよう、竹富町におけるワークショップや聞き取り調査等を実施した。具体的には、竹富町と共同で現地ワークショップを開催し、町民のMPAに対する意識を把握するとともに漁業関係者へのインタビューを行い、今後のMPA設定に向けた課題を明らかにした(図9~10参照)。また、竹富町役場と共同で竹富町住民全体へのアンケート調査を行い、住民が持つ海に対する価値観や、住民の海との関わり方を明らかにした。主な結果はコラム(別ページ)を参照されたい。
本研究は、竹富町役場、同町の漁業者、ダイビング事業者、カヌー事業者をはじめとし、関係諸機関の方々の快いご協力を得て実現できた。ここに記して謝意を表するとともに、本研究結果が竹富町における海域の保全と利用の望ましいあり方の検討や、竹富町版海洋保護区の設定に向けた取り組みを後押しする一助となれば幸いである。

図9 竹富町・川満町長を表敬訪問(竹富町役場)

図9 竹富町・川満町長を表敬訪問(竹富町役場)

図10 竹富町でのワークショップ(竹富町 西表島 大原離島総合振興センター)

図10 竹富町でのワークショップ(竹富町 西表島 大原離島総合振興センター)

(注1)国際自然保護連合(IUCN):国家、政府機関、非政府機関で構成された国際的な自然保護機関。IUCNはInternational Union for Conservation of Nature and Natural Resourcesの略。

Contents
研究者発の海の話
水産業の振興に向けた海の「砂漠化」対策
海溝というもの
漁村を活性化するのは「心」なのか「環境」なのか?
高性能な船を実験水槽で開発する方法をウェブでわかりやすく説明する
地球温暖化だけでサンゴ礁の国は水没しない
海中ロボットで海を身近に
河川の構造物はニホンウナギの行く手を阻んでいるか?
「赤潮」の頻発と養殖漁業 ~インドネシア・ランプン湾を例に~
大学における学際海洋教育を推進するための基礎データ
島嶼(とうしょ)における海洋保護区のあり方と意義
海洋生物の多様性保全と利用を考える
海を守る、地球を守る
我が国の離島の保全・管理や振興
海面上昇に対する沖ノ鳥島の維持
「海」から展開する情報プラットフォームとネットワーク
海洋深層水の利用
うみあるきとは?-システム開発の目的と方針
現代の海賊問題と日本
沿岸域利用についての合意形成メカニズムの評価検討
次世代海洋研究者の育成
陸と海のつながりと海洋生態系
大学における学際的海洋教育研究
漁業をまもる先端技術
海底に眠る鉱山—熱水鉱床
海洋に関わる諸活動のコスト・ベネフィット評価
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