研究者発の海の話研究者発の海の話

陸域の人間活動からの海洋の保全(概要)

カテゴリ 陸と海のつながりと海洋生態系
掲載日 2010.04.19
新領域創成科学研究科 高橋鉄哉

 世界の海で、地球温暖化問題、赤潮や青潮に代表される富栄養化1)問題、外来生物の移入問題など人間活動に起因すると考えられる多様な問題が顕在化している。2001年、UNEP(国連環境計画)、UNESCO-IOC(ユネスコ政府間海洋学委員会)等8つの国連機関からなる合同専門家会合であるGESAMP(海洋環境保護の科学的側面に関する専門家会合)は、世界の海洋・沿岸域の現状を分析し、人類とその生存基盤である海洋の関係が変化し、世界的な多くの努力にも関わらず、陸上を基盤とする人間活動により世界の海洋の劣化が進行していることを指摘した(GESAMP,2001)。国連海洋法条約(1994年発効、1996年日本批准)では、各国の管轄海域における権益を保証するとともに、各国の海洋環境保全について義務を規定しており、また、2002年のWSSD(持続可能な開発のための世界サミット)では、海洋汚染要因の7割を占める陸上活動からの海洋環境の保護に関する世界行動計画(GPA)の実施促進が採択されている。人間活動のインパクト(影響)から海洋を保護して、自然との共生を可能とする持続的な社会を構築することは、今や国際的な責務となっている。このためには、海洋環境の現状を正確に把握し、適切に評価するための情報が必要である。

東京湾(幕張)の赤潮

東京湾(幕張)の赤潮 (出典:海上保安庁)

大村湾喜々津港の青潮

大村湾喜々津港の青潮


 これまで、海洋で起こるさまざまな問題を対象として、海洋情報を収集する多様なモニタリングが国内外で実施されてきた。海洋は、主要な人間活動の場である陸域の2倍以上の面積に及び、海洋で生じる問題は、海自体の力学によって支配される自然現象と人為インパクトとの複合現象として現れる。このことがしばしば人為影響成分の抽出を困難とし、実効的な対策を困難なものとしている。その上、現象解明の基礎となる海洋情報を収集するモニタリングの手法には課題が多く未だ発展途上である。このため、海洋で生じる問題の解決に各国は苦慮しており、早急な対策が必要とされている。

大村湾(津水湾)の青潮による被害

大村湾(津水湾)の青潮による被害

酸素を求めて表層まで浮いてきたゴンズイ

酸素を求めて表層まで浮いてきたゴンズイ

(注1)富栄養化:水中の窒素・リン濃度が上昇すること。

参考文献
Contents
研究者発の海の話
水産業の振興に向けた海の「砂漠化」対策
海溝というもの
漁村を活性化するのは「心」なのか「環境」なのか?
高性能な船を実験水槽で開発する方法をウェブでわかりやすく説明する
地球温暖化だけでサンゴ礁の国は水没しない
海中ロボットで海を身近に
河川の構造物はニホンウナギの行く手を阻んでいるか?
「赤潮」の頻発と養殖漁業 ~インドネシア・ランプン湾を例に~
大学における学際海洋教育を推進するための基礎データ
島嶼(とうしょ)における海洋保護区のあり方と意義
海洋生物の多様性保全と利用を考える
海を守る、地球を守る
我が国の離島の保全・管理や振興
海面上昇に対する沖ノ鳥島の維持
「海」から展開する情報プラットフォームとネットワーク
海洋深層水の利用
うみあるきとは?-システム開発の目的と方針
現代の海賊問題と日本
沿岸域利用についての合意形成メカニズムの評価検討
次世代海洋研究者の育成
陸と海のつながりと海洋生態系
大学における学際的海洋教育研究
漁業をまもる先端技術
海底に眠る鉱山—熱水鉱床
海洋に関わる諸活動のコスト・ベネフィット評価
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