研究者発の海の話研究者発の海の話

我が国の離島とその周辺海域-現状と利用-専門家を招いたシンポジウムの開催結果より-

カテゴリ 我が国の離島の保全・管理や振興
掲載日 2011.12.26
新領域創成科学研究科 高木健

 海洋基本法では、我が国の離島は領海と排他的経済水域の保全、海上交通の安全確保、海洋資源の開発利用、海洋環境の保全等に重要な役割を担うとして、それらに必要な処置を講ずることとされている。様々な海の専門家が所属する海洋アライアンスは、この海洋基本法に基づく施策に色々な立場で貢献することが期待されている。しかし、我々は今我が国の離島とその周辺海域に起こっている出来事をどの程度知っているだろう。このような問題意識の下に、国土交通省都市・地域整備局離島振興課大野淳課長、(独)港湾空港技術研究所海洋・遂行部海洋研究領域 下迫健一郎領域長、(独)水産総合研究センター水産工学研究所 水産土木部水産基盤グループ 中山哲厳グループ長の3名を招いてシンポジウムを開催した。

1.離島の現状

離島の人口減少率と高齢者比率

離島の人口減少率と高齢者比率 [図を拡大]

 大野課長によれば、我が国は6,852の島嶼により構成されている。このうち、本州、北海道、四国、九州および沖縄本島を除く6,847島が離島である。離島はほとんどが無人島であり、有人島はわずか421島である。さらに、これらの内から奄美群島、沖縄諸島、小笠原諸島を除いた離島が離島振興法による振興対策実施地域に含まれる。それらの有人離島は258島である。これらの有人離島では、他の条件不利地域に比べても、人口減少率および高齢者率は著しく高い。また、人口減少の度合いは本土に近接した離島のほうが高く、高齢者の割合も多い。

 中山グループ長によれば、平成19年全国海面漁業・養殖業生産額15,757億円の内、離島地域の生産額は9.9%にあたる1,558億円で、離島地域の第1次産業生産額総計2,199億円の70.9%に相当する。すなわち、漁業は離島の基幹産業であり、全国的に見てもその生産額および就業者数は重要だといえる。しかしながら、高齢化、魚価の低迷による経営悪化、人口減少など離島の漁業を取り巻く状況は大変厳しい。このような状況を抜け出すためには、種々の支援を基に、魅力と活力のある漁村を復活させ、漁業を中心とした水産業の振興を図らねばならない。

2.離島の利用

 一方、南鳥島や沖の鳥島のように、我が国の排他的経済水域の基点となる遠隔離島がある。下迫領域長によれば、これらの島は、排他的経済水域及び大陸棚の保全及び利用の促進のための低潮線の保全及び拠点施設の整備等に関する法律に基づき、地理的条件、社会的状況及び施設整備状況等から周辺の排他的経済水域等の保全及び利用を促進することが必要な特定離島として指定されている。また、この法律に従って、南鳥島の港湾設備のための現地調査が行われた。この港湾は南鳥島へのアクセスにおいて重要な役割を果たすことは間違いないが、離島の厳しい条件下での建設コスト削減や環境保全などに技術革新が求められている。

 このように、我が国の離島は国を構成する重要な要素であるにも関わらず、本土とは異なる問題を多く抱えている。排他的経済水域の維持に直接関わる遠隔離島は国の戦略として資金を投入していくことが必要であるが、有人離島においては住民たちが自らのアイデアで産業を振興することも大切である。例えば、隠岐郡海士町のイワガキを核にした取り組みや、自然を武器にした屋久島の観光に対する取り組みなどは、その良い例であろう。このような取り組みを生み出す仕組みとして、工学部システム創成学科の学生グループは伊豆大島における地域活性化プランコンテストを企画している。

Contents
研究者発の海の話
水産業の振興に向けた海の「砂漠化」対策
海溝というもの
漁村を活性化するのは「心」なのか「環境」なのか?
高性能な船を実験水槽で開発する方法をウェブでわかりやすく説明する
地球温暖化だけでサンゴ礁の国は水没しない
海中ロボットで海を身近に
河川の構造物はニホンウナギの行く手を阻んでいるか?
「赤潮」の頻発と養殖漁業 ~インドネシア・ランプン湾を例に~
大学における学際海洋教育を推進するための基礎データ
島嶼(とうしょ)における海洋保護区のあり方と意義
海洋生物の多様性保全と利用を考える
海を守る、地球を守る
我が国の離島の保全・管理や振興
海面上昇に対する沖ノ鳥島の維持
「海」から展開する情報プラットフォームとネットワーク
海洋深層水の利用
うみあるきとは?-システム開発の目的と方針
現代の海賊問題と日本
沿岸域利用についての合意形成メカニズムの評価検討
次世代海洋研究者の育成
陸と海のつながりと海洋生態系
大学における学際的海洋教育研究
漁業をまもる先端技術
海底に眠る鉱山—熱水鉱床
海洋に関わる諸活動のコスト・ベネフィット評価
page top