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海面上昇に対する沖ノ鳥島の維持

カテゴリ 海面上昇に対する沖ノ鳥島の維持
掲載日 2009.07.20
理学系研究科地球惑星科学専攻 茅根創
図1 沖ノ鳥島の位置

図1 沖ノ鳥島の位置 [図を拡大]

図2 沖ノ鳥島

図2 沖ノ鳥島 [図を拡大]

 沖ノ鳥島は、北緯20度25分、東経136度5分に位置する、我が国最南端の島である。東京から1700km、もっとも至近の島でも、北西の沖大東島、北東の南硫黄島まで、いずれもそれぞれ550km離れる孤島である。そのため、この1島で周囲に40万km2もの排他的経済水域を有する重要な島である(図1)。
 沖ノ鳥島は、東西4.5km、南北1.7kmのなすび型の卓礁型のサンゴ礁である(図2)。ほぼ低潮位に位置する礁原に取り囲まれた内側は、水深最大5.5mの浅礁湖になっている。国連海洋法条約では、「自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるもの」を「島」というが、沖ノ鳥島というサンゴ礁において、高潮位以上に頭を出す「島」は、北小島と東小島の2つである。


 これまで両島を波による浸食から守るために、堅牢な護岸が施工されている。しかしながら両島は、現在高潮位上わずかに頭を出すだけである(図3)。今世紀の海面上昇は、18-59cmと予測されている(IPCC第4次報告書)。よって、現在の島を浸食から守っても、海面上昇によって早ければ今世紀半ばには水没してしまう。

図3 東小島の現況

図3 東小島の現況

 沖ノ鳥島のように、サンゴ礁だけからなる卓礁や環礁の島では、高潮位以上に頭を出す州島は、サンゴ礁の土台の上にサンゴなどの石灰質の骨格のかけらが打ち上げられて作られる。州島によっては、有孔虫の殻が堆積物の半分以上をしめる場合もある。州島の形成・維持のためには、サンゴや有孔虫などが砂を作る生物過程が重要であることがわかる。
 沖ノ鳥島も、サンゴなどの生物が積み重なって作った地形である。しかし孤立しているという生物地理的位置づけのため、サンゴや有孔虫の造礁能力が乏しい。そのため、自然の生物作用だけでは、海面上昇に対応した島の新たな形成は望めない。今世紀に予想されている海面上昇に対応して、自然の営力で島を維持するためには、サンゴなどの石灰化生物の生産力をあげてやることが必要である。
 そのためには、造礁力の高いサンゴを移植や種苗生産を行うこと、有孔虫を導入するなど、生態工学的な技術開発が必須である。現在、サンゴ礁生態系再生のために、移植や種苗技術の開発が進んでいるが、島の創成という視点からこうした技術開発を見直す必要があろう。
 海面上昇による島の水没の問題は、沖ノ鳥島だけの問題ではなく、地球上に約500分布する環礁、とくにマーシャル諸島共和国やツバル、モルジブなどの環礁国家に共通する問題である。もし沖ノ鳥島で、生態工学的な島の創成技術が確立すれば、それは、水没の恐れのある世界中の環礁の維持にも大変役立つことになるだろう。
 現在、沖ノ鳥島は、国土交通省河川局が国の直轄海岸として保全事業を実施している。一方、水産庁は沖ノ鳥島におけるサンゴ種苗技術開発を進め、6万株の稚サンゴ種苗に成功している。さらに東京都は、島の周辺に浮き魚礁を設置して、漁場開発に力を注いでいる。こうした様々な事業、島の保全と、サンゴの再生、水産振興は、お互いに関係しあう内容である。たとえばサンゴの再生が砂の生産や漁業生産にもつながるなど、相互に深く関連している。海面上昇に対する沖ノ鳥島の維持という緊急の課題に対して、相互に情報を共有し、総合的なグランドデザインを建てることが求められている。

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