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沿岸域における陸域-海域相互作用研究計画(LOICZ)

カテゴリ 「海」から展開する情報プラットフォームとネットワーク
掲載日 2010.10.12
新領域創成科学研究科 山室真澄

 Land-Ocean Interactions in the Coastal Zone(沿岸域における陸域-海域相互作用研究計画、LOICZ)は、地球圏-生物圏国際共同研究計画(IGBP)と地球環境変化の人間社会側面に関する国際研究計画(IHDP)のコアプロジェクトの一つである。1993年以来、沿岸域の生物学、化学、物理学における変動を研究する世界各地の科学者が参加している。2003年からは研究領域を社会、政治、経済に広げ、その結果、沿岸域における人為的な側面も研究対象としている。

 LOICZの目的は、沿岸の変化を決定付けるような地球環境変動と人間の影響との相互関係を、沿岸域の人々が評価・予知及び適切な対応するために必要となる知識や予測を、科学者だけでなく、政策担当者や沿岸域の管理者、その他沿岸域に関わるすべての人に提供することにある。また沿岸域の持続的な利用を可能とする人材の育成にも力をいれている。

 LOICZはIGBPとIHDPのコアプロジェクトであるが、IGBP、IHDPはともに、国際科学会議(ICSU)による研究計画である。また、LOICZが展開しているプロジェクトの中には、国連環境計画(UNEP)、地球環境ファシリティ(GEF)、地球変動に関する分析・研究・研修システム(START)等の様々な国際機関や計画と協力して計画を進めているものもある1)

 LOICZは、沿岸域の環境問題に関係する世界中の研究者を対象に、それぞれの研究プロジェクトとの提携(affiliate)を進めることで、沿岸域関係者のネットワーク化を図っている2)

 LOICZが定めている3つの研究テーマもしくは5つの研究トピックに関連がある課題が提案され、それが事務局によって承認されると、課題提案者との間で提携が成立し、LOICZのホームページや、世界中に配布されるそのニュースレターに企画の紹介や成果の報告できる。また下記で紹介する関連するシンポジウムやワークショップの開催情報や他のIGBP、IHDPの動向などがメールで配信される。

図1 科学委員の出身国およびLOICZ事務局と地域拠点の位置

図1 科学委員の出身国およびLOICZ事務局と地域拠点の位置 [図を拡大]

 LOICZはまた、上記の課題に関連する様々なシンポジウムやワークショップを世界各地で開催し,沿岸域関係研究者の連携を図っている。集会の成果は学術誌の特集号(A. Newton and J. Icely, 2008) や書籍として出版している。上記の提携やシンポジウム、ワークショップなどの活動を通じて、LOICZに関わった研究者は、これまでに数千名以上となっている。またその活動の科学面での運営は18名の科学委員によって検討されるが、委員が世界各地から万遍なく選ばれている点に特色がある(図1)。


 沿岸域の環境問題について海外の研究者と情報交換をしながら研究を展開した研究者にとって、LOICZは窓口として機能することが期待される。

(注1)詳細はホームページ参照。
http://www.loicz.org/index.html.en

(注2)過去の提携プロジェクトは下記リンクから参照できる。
http://kopc01.gkss.de:7777/loiczdb/faces/app/Welcome.jspx

参考文献
  • A. Newton and J. Icely eds., “Land Ocean Interactions in the Coastal Zone, LOICZ: Lessons from Banda Aceh, Atlantis, and Canute” Estuarine, Coastal and Shelf Science, Volume 77, Issue 2 pp. 181-308 (2008)
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Contents
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