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日本における海上物流の重要性と海賊のリスク

カテゴリ 現代の海賊問題と日本
掲載日 2010.10.12
公共政策大学院 長谷知治

1.日本における海上物流の重要性

我が国の輸入依存度

我が国の輸入依存度 [図を拡大]

世界と日本の海上貿易量(重量ベース)

世界と日本の海上貿易量(重量ベース) [図を拡大]

 四面を海に囲まれる我が国においては、重量ベース(2007年度)で、国際貨物輸送量の99.7%(国内貨物輸送量は7.6%(重量×距離ベースでは34.9%))を海上輸送が占めており(「数字で見る物流2009」)、主要商品の輸入比率を見ると、基礎産業物資から漁業資源、農産物等に至るまで多岐にわたる物資を輸入に依存している。このため、安定的な海上輸送の確保は、日本にとって極めて重要な課題の一つであり、例えば、船舶が航行する海の安全が妨げられると、経済活動、国民生活に大きな影響を及ぼすことになる。
 また、経済のグローバル化に伴い、例えば日本で付加価値の高い部品等を生産し、中国等で部品を組立て、最終製品を日本、米国等へ輸出するという工程間分業が進展し、その一翼を担う海上輸送はより一層活発になっている。世界の海上荷動量は、2009年はリーマンショックにより減退したと言われているが、トンベースでは、2002年から2008年の年平均伸率は6%となっており、今後の予測でも総体としては増加傾向と見込まれている中で、船舶航行の安全の確保は世界的にも大きな課題の一つになっている。
 なお、2007年7月20日に施行された海洋基本法においても、海上輸送の安全性の確保の重要性の認識が明確化され、第3条では「海洋については、海に囲まれた我が国にとって海洋の安全の確保が重要であることにかんがみ、その安全の確保のための取組が積極的に推進されなければならない」とし、基本的施策の一つとして、第21条においては「国は、海に囲まれ、かつ、主要な資源の大部分を輸入に依存する我が国の経済社会にとって、・・海上輸送等の安全が確保され、並びに海洋における秩序が維持されることが不可欠であることにかんがみ、海洋について、我が国の平和及び安全の確保並びに海上の安全及び治安の確保のために必要な措置を講ずるものとする」とされている。

2.海賊のリスク

(1) 海上輸送をめぐるリスク

 日本の経済活動・国民生活を支えている海上輸送であるが、例えば海外の工場で生産された製品が私たち消費者に届くまでには多様なリスクが存在する。一番大きなリスクとしては、海難事故があるが、その原因としては、気象、海象、航行水域の状況、船体の状況等いろいろなものが存在する。これらにより、船舶の座礁、衝突、浸水、火災、転覆等を発生せしめるとともに、海難事故の結果、積み荷の損傷、海洋汚染、船員の死傷を生じさせたりもする。また、スエズ動乱、イラン・イラク戦争といった戦争やテロも船舶・積み荷等に対するリスクの一つである。こうしたリスクとともに、現在海上輸送にとって大きなリスクとなってきているのが海賊によるリスクである1)

(2) 海賊の発生状況

海賊の発生状況

海賊の発生状況 [図を拡大]

1) 概観

 海賊の発生状況については、世界的には2006年まで減少傾向にあったが、東南アジア海域は、沿岸国、二国間(日、米、中等)及び多国間(IMO、ASEAN等)の枠組み2)による対応により減少傾向(170件(2003)⇒45件(2009))にある一方、ソマリア沖、アデン湾は急増し、2008年は全世界の約4割、2009年は217件と全世界の半数を超えた3)

2) 日本関係船舶の被害状況

 海賊の被害を受けた日本関係船舶(船籍を問わず邦船社が運航する船舶)については、2009年は5件(前年:12件)であり、パナマ籍3隻、ドイツ籍1隻、ケイマン諸島籍1隻となっており、日本籍船はなかった。そのうち日本人船員が乗船していた船舶は1隻となっている。

(注1)コラム「海賊の定義」を参照。

(注2)それらの取り組みについてはコラム「海賊をめぐる国際的な協力」を参照。

(注3)詳しくは、コラム「アデン湾・マラッカ海峡における海賊事件」を参照。

Contents
研究者発の海の話
水産業の振興に向けた海の「砂漠化」対策
海溝というもの
漁村を活性化するのは「心」なのか「環境」なのか?
高性能な船を実験水槽で開発する方法をウェブでわかりやすく説明する
地球温暖化だけでサンゴ礁の国は水没しない
海中ロボットで海を身近に
河川の構造物はニホンウナギの行く手を阻んでいるか?
「赤潮」の頻発と養殖漁業 ~インドネシア・ランプン湾を例に~
大学における学際海洋教育を推進するための基礎データ
島嶼(とうしょ)における海洋保護区のあり方と意義
海洋生物の多様性保全と利用を考える
海を守る、地球を守る
我が国の離島の保全・管理や振興
海面上昇に対する沖ノ鳥島の維持
「海」から展開する情報プラットフォームとネットワーク
海洋深層水の利用
うみあるきとは?-システム開発の目的と方針
現代の海賊問題と日本
沿岸域利用についての合意形成メカニズムの評価検討
次世代海洋研究者の育成
陸と海のつながりと海洋生態系
大学における学際的海洋教育研究
漁業をまもる先端技術
海底に眠る鉱山—熱水鉱床
海洋に関わる諸活動のコスト・ベネフィット評価
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