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【成果報告】「小島嶼国研究会」2016年度

2017/02/22


海洋アライアンスイニシャティブ

小島嶼国研究会 (2016年度活動報告)


主提案者

 茅根 創・理学系研究科地球惑星科学専攻・教授

共同提案者

 田島芳満・工学系研究科社会基盤・教授

 杉本史子・史料編纂所・教授

 八木信行・農学生命科学研究科農学国際専攻・准教授

 高木 健・新領域創成科学研究科海洋技術環境学専攻・教授

 西本健太郎・公共政策大学院・非常勤講師(東北大学・法学系・准教授)


研究の目的

 太平洋の小島嶼は,領海と排他的経済水域の基点になっているが,海面上昇の水没の危機にある.本研究会は,1)沖ノ鳥島を対象として,研究者,行政,民間のセクターを超えた議論の場を設け,海面上昇に対する島の生態工学的維持のための技術を構築するとともに,2)こうして得られた技術を,太平洋の小島嶼国と共有・適用して,問題の解決をはかる.さらに3)島嶼や領海の概念の成立過程について検討する場を設ける.こうして,沖ノ鳥島の問題を,領土・領海・EEZの問題に狭くとらえず,(1)国内のセクター間連携,(2)国際連携,(3)異分野連携の中で見直す.


1)島の保全のための生態工学

 州島の生態工学的維持について,国土交通省委託事業「サンゴ礁州島形成モデルの開発」(平成23-25年度),「サンゴ礁海岸保全モデルの開発」(平成26-27年度)の成果をまとめ,サンゴや有孔虫の砂生産とサンゴ礁上の砂礫移動モデルを結合した,サンゴ礁海岸保全モデルを,工学系研究科・田島芳満教授らとともに構築した.このモデルを小島嶼国研究会沖ノ鳥島勉強会(2016年11月4日)で報告し,沖ノ鳥島で現在進められている国土交通省,水産庁,東京都の事業を,州島の生態工学維持のために有機的に結合するためのグランドデザインを提案した.

 本勉強会には,大学,研究機関,国土交通省,水産庁,東京都,財団等と民間の163名が登録している.11月4日の勉強会には56名が出席した(写真1).勉強会では,我々の取組をとりあげたドイツの科学番組を,翻訳つきで映写した.

写真1.jpg写真1.2016年11月4日「小島嶼国研究会・沖ノ鳥島勉強会」(東京大学理学部).


 さらに,海洋アライアンスとして,国土交通省遠隔離島における産官学連携型の海洋関連技術「サンゴ礁からなる遠隔離島の生態工学的保全技術」が採択され,2017年2月8日−22日に,港湾空港技術研究所に同行して,もう一つの遠隔離島である南鳥島において,同島の地形と海岸変形,形成過程の調査を行った(写真2).

写真2.jpg写真2.2017年2月 南鳥島調査.


2)小島嶼国への適用

 太平洋の小島嶼国は,経済・社会のグローバル化の中で周縁に位置づけられ,自らの産業を持たず出稼ぎと支援に頼っている国もある.さらに環境変化に対してもぜい弱で,環礁島は標高1−2mと低平,狭小で,海面上昇によって国土水没の危機にある.一方で,環礁国で起こっている問題は,不適切な土地利用やサンゴ礁生態系の劣化,埋め立て・護岸による砂礫移動・堆積プロセスの遮断などローカルな要因が大きい.そうしたローカルな要因は,経済・社会のグローバル化の中で起こっており,それを無視して生態工学的に正しい施策を提案しても,現地に受け入れられない.

 小島嶼国研究会は,海面上昇に対する環礁国水没の問題を沖ノ鳥島と共有する問題としてとらえ,州島維持の生態工学技術を,マジュロ,ツバルなどの環礁国家へ適用することを目指している.そのために,2016年5月に世界銀行の小島嶼国レジリアンスイニシャチブ(SISRI: Small Island States Resilience Initiative)のワークショップ(ベニス)に,11月に国連訓練研究所(UNITAR)の災害リスク軽減トレーニングプログラム(仙台)とパネルディスカッション(東京・国連大学)に,2017年2月にアジア太平洋安全保障協力会議(CSCAP: Council for Security Coopertion in the Asia Pacific)の海洋環境保護スタディグループワークショップ(東京・日本国際問題研究所)に出席して,島嶼国の参加者に,海面上昇に対する生態工学的国土保全策を紹介・提案した.また2017年1月には東京都沖ノ鳥島フォーラムで,島の生態工学的保全策を紹介した.

 小島嶼国のステークホルダーに,島のぜい弱性を理解してもらうツールとして,ツバル・フォンガファレ島の段ボールジオラマを製作し,ワークショップで参加者自らに組み立ててもらい,展示した(写真3).

写真3.jpg写真3.ツバル・フォンガファレ島の段ボールジオラマ.


 2016年12月には,笹川平和財団海洋政策研究所が主催した「島と海のネット(IOネット)第2回総会」に,コアメンバーとして参加した(写真4).国際総会には外務省,JICAや,SPC, SPREP, USP,国連などの国際・地域機関関係者,マーシャル諸島共和国,サモア,クック諸島,パラオ,ソロモン諸島,キリバス,ミクロネシア連邦などの政策策定関係者らが出席し,今後の活動について議論した.海洋アライアンスからは「島の保全のためのエコエンジニアリング」プロジェクトを提案し,オークランド大学,SPREP, SPC などと協力して,試験的・実践的なプロジェクトを通じて共同政策提言の実現を目指すことが合意された(図).

写真4.jpg写真4.2016年12月「島と海のネット(IOネット)第2回総会」(笹川平和財団).

図.png図.IOネット事業案「島の保全のためのエコエンジニアリング」.


3)領海と島嶼の歴史的認識

 小島嶼国との連携が,沖ノ鳥島の問題の空間的相対化であるのに対して,領土・領海・島嶼の概念を,時間的に相対化する場として,史料編纂所・杉本史子教授がモデレーターとなって,2月21日に小柴ホールにおいて,シンポジウム「領土・領海と島嶼」を実施した(写真5).シンポジウムには,歴史学,国際法の研究者を招いて,近代から近世という時間軸で,日韓による竹島領有権主張の論点とその歴史学的な妥当性(名古屋大・池内),近代国家形成の過程で地方統治制度から排除されてきた島嶼(神奈川大・高江洲),国際法における領海概念の変遷(東北大・西本)らの講演に続き,杉本と木村(立教大)の司会による総合討論があった.

写真5.jpg写真5.2017年2月21日シンポジウム「領土・領海と島嶼」(東京大学小柴ホール)

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