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【シンポジウム】第7回東京湾海洋環境シンポジウム「生き物たちの東京湾:生物調査から見た東京湾環境」

2015/10/07

開催期間:2015年10月7日(水)13時開始

開催場所:東京海洋大学楽水会館

提案者名・所属・役職:野村英明・海洋アライアンス・特任助教

講演要旨集:東京湾シンポ7_要旨集_案S.pdf

報告書:OAWS_15_03_東京湾海洋環境シンポジウム7報告書.pdf



イベントの概要:

環境再生の合意の形成を加速するためにはモニタリングの活用は有効な手段の一つと考えられる。そこで、今回は比較的市民にとっても親しみやすい生物を対象にした東京湾で行われているモニタリング調査に関わる研究機関,市民団体に声がけして講演を依頼した。

前半と後半を分け、前半では大学研究機関、後半では市民のよる活動について講演の時間を設けた。

国立環境研究所の堀口氏は、1977年から1995年まで続いていた清水誠東京大学名誉教授の東京湾の20定点底曳き網調査を2002年から再開し引き継いで実施している。その調査結果を報告した。経時的な比較をすると、1990年代まで優占していたシャコ、ハタタテヌメリ、マコガレイが減少し、サメ・エイ類(板鰓類)とスズキ、特に板鰓類が著しく増加し、2010年以降は二枚貝のコベルトフネガイも顕著に増加した。東京湾の大型底生生物は、少ない種が多量に出現する組成に変化してきていることを示した。

東邦大学の多留氏は、環境省によるモニタリングサイト1000に設定されている盤洲干潟を例に、詳細な種同定によって、希少種の出現状況を明らかにすると共に、外来種の出現を見極め初動対応をとるためのモニタリングの重要性を指摘した。その上で底生生物層の異変を発見するために解決すべき3つの課題、すなわち、標本の管理の最適化、同定にかかわる人材の不足、それらや継続性に関わる資金的裏付けの脆弱性を指摘した。

いであ(株)の川口氏は、谷津鳥獣保護区における環境省の保全への取り組みについて紹介した。ここでは順応的管理手法が導入され、シギ・チドリ類の採餌場の減少の要因である海水滞留を起こす堆積物の除去を例に、底質改良試験を実施し、その中で底質と底生生物のモニタリングを行った。この機会を利用した、地域住民の調査への参加についてを報告した。

東京都の風間氏は、都環境局が行ってきた水生生物調査の概要を紹介した。水生生物調査は法律的根拠がないため、規模縮小を余儀なくされてきている。しかしながら、この調査は都区部海域の生物の状況を、生息環境と共に調べるもので、その全てのデータは東京都のホームページから配信している。こうしたモニタリングの継続性を担保することと、都民にいつでも見られる形で発信し続けることが東京都民が水環境を知る重要な役割を担っていると報告した。

市民活動の部に入って、NPO法人行徳野鳥観察舎友の会の野長瀬氏は、かつて行徳鳥獣保護区で景観再生を実施した経緯を説明した後、現在保護区を活用して行われている「江戸前干潟研究学校」という企画で、一般参加者と共に行っている水生生物調査(毎月1回実施)の結果を報告した。また、今後の保護区の活用の展開や、参加者の増加を図っていくとの説明があった。

報告書添付_井芹氏講演風景_0141.png

国土技術政策総合研究所の井芹氏は、江戸前アサリ「わくわく」調査の結果を報告した。本調査は、アサリ稚貝の発生状況を市民に参加してもらうことで広域的に行おうとするものである。稚貝(≤10 mm)を見ると2014年には横浜・潮騒の渚、海の公園、野島前浜干潟で多かったのに対し、2015年は横浜・潮騒の渚も前年同様に多かったものの、それにもまして小櫃川河口干潟で多く観察され、年によって明らかな違いがあることがわかった。市民参加型調査は分布や頻度が安定しないものの、参加者が増えることで広域で行える利点があるだけでなく、市民が海とふれあう機会にもなっていることが報告された。

東京港水中生物研究会の尾島氏は、1997年から19年間続けているお台場海浜公園の生物調査を通して、リアルな海底の状況を報告した。水深毎の海底の底質の変化、赤潮によって水深1 mではライトをつけないと何も見えない様子や夏の海底の貧酸素状態になったときの生き物の姿を映像記録として紹介し、まさに現場でなければ見られない状況を解説し報告した。

総合討論では、今回の目的であった情報の集約とアクセスビリティーの向上に関する議論を深めるには十分な議論にならなかったものの、モニタリングに関する認識には違いがあり、むしろ今後のモニタリングの使い方に関する意見交換が進んだ。研究者サイドとしては、モニタリングをどう使うかの目的を明らかにすることが大切である。モニタリングの成果が社会に発信され、それが様々な場面で役に立つという派生的な効果が重要である。それは環境政策であったり、環境教育による市民の知識の底上げだったりする。

ところが、モニタリング自体が社会のインフラとして、社会的あるいは行政的に認知されていないため、資金的支えが乏しいのが現実である。市民活動としてのモニタリングにおいては、調査の精度を担保する必要があるために、知識情報の収集が必要である。モニタリング情報の集約を望む声は多い。しかしながら、情報を発信する研究者サイドにしてみると、資金的裏付けがないので、継続性やポストを確保出来ていない不安の状況にある。このことが、研究としてばかりでなく、生物の種査定の技術が継承しづらく、また、技術を持っている人材を増やし、アウトリーチとして市民活動に供給すること、すなわち研究者としても科学を下支え出来る人材を常時確保し、排出することができなくなっている。

こうした状況は、社会にとって大きな損出である。地域に広くモニタリング網を拡げ、生態系の状況をチェックし、常に国土の状況を把握することは,実は重要なことで、研究機関や市民活動にまかせ、それらを支える枠組み(データ精度の担保や関わる専門家の育成し維持する継続的な仕組み)を国として用意することも必要であることが全体から浮き彫りになった。今後も、こうした助成の機会を利用して、東京湾の再生に貢献出来る企画を行い、官民での情報共有と意見交換の場を提供していく予定である。

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