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【ワークショップ】東北水産業の復興における参加型意思決定の役割(2013/6/10)
2013/07/10

東京大学海洋アライアンス ワークショップ

東北水産業の復興における参加型意思決定の役割



 日時: 2013年6月10日(月)15時~17時

 場所: 東京大学大学院農学生命科学研究科 フードサイエンス棟

     中島董一郎記念ホール(東京都文京区弥生1-1-1)

 主催: 東京大学 海洋アライアンス

 協賛: 日本財団


<プログラム>

15:00 開会挨拶

15:10 三陸の漁業復興と水産特区と水産特区

赤間 廣志(松島湾 漁師/宮城海区漁業調整委員)

15:40 共有資源の住民参加型マネジメント

トムソン・カリーカル(インド・コーチン科学技術大学

産業漁業学部教授)

16:20 コメンテーターによる問題提起および総合討論

八木 信行(東京大学院農学生命科学研究科 准教授 )


<趣旨>

 東日本大震災で津波被害を受けた東北水産業は,被災1年目(2011年)に比較的素早い復興の動きが各所で見られたものの,被災2年目(2012年)以降はそのスピードが減速している場所もある.

 この理由として,東北被災地と,東京などの都市部との連携の悪さを指摘する声がある.例えば水産物の流通では,東京の小売店が震災後に東北以外から商材を調達するルートを確立させたために,東北被災地で生産が復旧しても小売りの段階で再参入が難しいとの指摘もある.更には,被災地漁業者の多くが反対する政策を県庁などがトップダウン的に導入しようとして現場が反発をしている例もある.東日本大震災復興特別区域法における「水産特区」を宮城県で導入しようとして現場が混乱しているのは,その代表例である.

 今回のワークショップでは,災害復興などにおける地方と中央の連携に関し,国際的な視点から議論を行うことで,今後の東北水産業の復興について改めて考えることを目指している.国際社会では,例えばインドネシア大津波の被災地への復興協力を行った際にはドナー(すなわち援助国)側が自分の価値観を受入国側に一方的に押しつけるだけでは復興がうまく進まなかった例も知られている.よって,最終的な決定は現地の実施者を入れた形で「参加型の意思決定」を行うべきとされている.東日本大震災で復興支援のアイディアを都市部の人間が被災地の漁業者に一方的に押しつけている状況(つまり「参加型の意思決定」を認めていない状況)があるとすれば,その対応は国際的にはどのように評価されるのかなど,外国人の研究者を交えて議論する.


<報告>

 2013年6月10日(月),東京大学海洋アライアンスでは,「東北水産業の復興における参加型意思決定の役割」をテーマにワークショップを開催した.本ワークショップでは漁業関係者のほか,学生,研究者,企業,メディアなど約70名の参加を得て,特に震災復興と関連した漁業・水産業における参加型意思決定の重要性について,ローカルな視点とグローバルな視点の両面から活発な議論が繰り広げられた.


 黒倉壽教授(東京大学農学生命科学研究科)による開会挨拶に続き,東北水産業復興の現場で尽力されている現役漁業者と国際事情に詳しいインド人研究者の2名に話題提供を頂いた.


 松島湾で漁業・水産加工業を営む宮城海区漁業調整委員の赤間廣志氏は,「三陸の漁業復興と水産特区」をテーマに,被災地の沿岸漁業・養殖業の復旧の現状及び宮城県の水産特区論争が生んだ功罪について,漁業者の視点から率直な意見を述べた.議論の渦中にある水産特区については,漁業者の意見が十分に反映されないままに行政によって話が進められてきたこと,それによって震災後の浜のなりわいの再生に遅れが生じたこと等についての問題提起がなされ,漁村集落の衰退を防ぐためにこれまでのアプローチを見直すことの必要性及び緊急性を訴えた.

     赤間氏資料:Akama20130610_OAWS_ppt.pdf


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水産特区について,一漁業者として現場の声を伝える赤間氏



 長年にわたり南アジアを中心とした漁村で調査・研究を行ってきたインド・コーチン科学技術大学のトムソン・カリカール教授は,インドとスリランカの事例を中心に,漁業管理における参加型意思決定の現状と課題について解説した.南アジアの漁業は,国及び州政府によるトップダウン型と地元の漁業者によるボトムアップ型の二重のガバナンス形態が見られ,さらに後者は大型漁業と零細漁業,そしてそれを取り巻く複数の関係者による複雑なマネジメント構造が存在しており,政治的な色合いが強い中で,漁業管理形態も時代とともに変化していることが強調された.

     Thomas氏資料:Thomson20130610_OAWS_ppt.pdf

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参加型意思決定を取り巻く課題について,インドと日本の共通点を指摘するThomson氏



 話題提供に続き,八木信行准教授(東京大学農学生命科学研究科)のファシリテートのもと,漁業の役割は経済的な側面だけでなく,漁場環境の保全や漁村文化の維持などもある点,また,ルール作りに参加することでそのルールの遵守率が上がる点など,報告者と会場の間で活発な意見交換が行われた.

     パネル討論資料:20130610_OAWS_panel_discussion.pdf

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八木准教授のファシリテートのもと,活発な質問や意見が飛び交った


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参加者からの多様な質問に答えるThomson氏と赤間氏


 国際社会では,例えばインドネシア大津波の被災地への復興協力を行った際には,ドナー(すなわち援助国)側が自分の価値観を受入国側に一方的に押しつけるだけでは復興がうまく進まなかった例も知られている.今回のワークショップでは,被災地漁業者の多くが反対する政策を県庁などがトップダウン的に導入しようとして現場が混乱している宮城県の「水産特区」などが議論された.東日本大震災のアイディアを都市部の人間が被災地の漁業者に一方的に押しつけ,その一方で,都市部では被災地産の農水産物消費が落ちるなど,都市と地方の連携に一貫性が欠ける状況があるとすれば,これらを解消するために議論のプラットフォームを用意すべきとの点で理解が進んだと言える.

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