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【サマーセミナー】東京大学とロードアイランド大学による共同サマーセミナー:Recovering from the Catastrophic Tsunami
2012/12/06

東京大学とロードアイランド大学による共同サマーセミナー

Recovering from the Catastrophic Tsunami


1_吉浜湾を背景に3.jpg

吉浜湾を背景に記念撮影


東京大学海洋研究所海洋アライアンス(機構長 浦環 生産研究所教授)とロードアイランド大学(URI)は,海に関する共同セミナーの実施に合意し,2012年5月に覚書を締結した.第1回目のホストとなった本学は「Recovering from the Catastrophic Tsunami」をテーマに,北里大学のキャンパスの残る南三陸町を実施場所として選定した.


本セミナーは,2012年8月7日(火)~15日(土)の期間で,北里大学三陸キャンパス(岩手県大船渡市三陸町)を拠点に,本学およびURIの大学院生各7名の計17名を受講生として,農学生命科学研究科の黒倉壽教授(代表)ほか日米教職員12名で実施された.


8月7日(火)の東京駅に,URIと本学の学生,教員およびスタッフが集まり,サマーセミナーへの旅が始まった.日米の学生たちはこれが初対面である.当然ながら最初はぎこちなかったが,水沢江刺の駅に着く頃にはすっかりと打ち解けていた.教員たちはそんな様子を見て感心するばかりであった.


セミナーの内容は講義,現地踏査,グループワークおよび発表からなる.講義はURI,東大および北里大学の教員が担当し,日本の沿岸集落の歴史から水産業の国際動向まで,様々な分野の知見を提供した.現地踏査では,三陸町周辺の綾里,吉浜,崎浜,陸前高田,越喜来湾,唐丹などを訪れた.それまで明るく元気だった学生たちも,惨状が生々しく残る場所に訪問すると一様に口を閉ざしてしまったことが印象的だった.また地元住民は何よりも重要な情報源だった.大槌の仮役所や大気海洋研究所の関係者から説明を受けたり,赤浜地区の仮設住宅では被災者と復興に向けての意見交換会を行ったり,さらに大船渡の屋台村では地元の人々と胸襟を開いて語り合ったりと,密度の高い情報収集のみならず,心のかよい合った出会いがあった.


グループワークは日米学生の混成チームで行われた.それぞれのグループが多角的視点で沿岸集落の復興計画を検討し,最終日には結果を発表した.以下は,それぞれのグループが提案したタイトルである.


Group A 大船渡の活性のために若者たちを取り戻す策

1_Post-Tsunami_Revitalization_of_the_Ofunato_Retion.pdf

中村彬良,Andrew Erickson,杉本華織,Nicholas Obolensky

北里大学は,震災により三陸からの撤退を余儀なくされた.地元は同学が再びこの地に戻り,経済のみならず様々な形の地域活性に取り組むことを期待している.しかしどのような形で戻ることが,大学と町の双方にとって望ましいのであろうか?地域における若者の存在意義を問いつつ考察した.


Group B エコツーリズムを取り入れた復興策を

2_Enhancing_Ecotourism_in_Ofunato.pdf

玉井友里,太田毅人,Sabrina Brotons

震災で傷ついたこの地であるが,幸いにも,美しい自然が残されている.また自然との共存のなかで育まれた独特な伝統もある.こうした環境を活かし,突棒体験など,新しいエコツーリズムを復興の梃子にすべきであると考え,経済性をはじめとしたフィージビリティの条件を検討した.


Group C 原発事故で疲弊した大槌の魚市場の復活策

3_Rebuilding_fishery_markets_after_the_Fukushima_nuclear_disaster_in_Otsuchi.pdf

Yi Zhang,Justin Willig,桑田恭光,齊藤純一

放射能に汚染された魚介類が様々な健康被害をもたらすのは論を俟たない.しかし今回は,安全基準の周知が不十分であるばかりに,実態とはかけ離れた不安が駆け巡ったことも事実である.そこで,ラベルの有効性を中心に,如何にして正しい情報が伝えられるべきかを検討した.


Group D 歴史が残した教訓を如何に活用するか

4_The_role_of_collective_memory_in_the_post-Tsunami_policy.pdf

Travis Roberts,Sarah Parker,菊池里紗

三陸沿岸は繰り返し津波に襲われてきたため,津波から身を守るための碑が残されている.そこには津波と対峙してきた経験と知恵が凝縮されている.これら歴史の残した教訓を今後の政策に如何に活用すべきだろうか.効果と限界を見極めつつ多角的に検討した.


日米の学生たちが,地元の人々の力を借りながら懸命に議論している姿を温かく評価したい.特に公用語が英語であったため,本学の学生たちには少なからず負担があったことと思われるが,異なる文化をもつ学生たちが言葉の壁を乗り越えながら被災地の問題に向き合ったことは,教育として意義深いだけでなく,学生たちにとっても貴重な経験である.


サマーセミナーが終了した後も,本学とロードアイランド大学の学生たちの交流は,舞台をSNSに移して今なお続いている.8泊9日ではあるが寝食を伴にした学生たちが自律的にネットワークを形成していくこと,これこそが実施教員の期待したところである.


2_花を手向ける.jpg 被災した方々に献花

3_海から被災2.jpg 海から被災状況を確認する

4_赤浜.jpg 赤浜の仮設住宅で被災した方に話を伺う

5_屋台.jpg 屋台村で地元の人たちと交流する

6_唐丹.jpg 唐丹の惨状を目の当たりにする

7_大槌.jpg 大槌の役場跡で手を合わせる


謝辞:今回のセミナーは海洋アライアンスとロードアイランド大学の共同企画で行われたものであるが,宿舎,キャンパスおよび現地ガイドを提供していただいた北里大学の協力は不可欠だった.また,赤浜地区,屋台村および魚市場の方々には多忙な中を快くインタビューに応じていただいた.これらの方々すべてにこの場を借りて御礼申し上げたい.海洋アライアンスの今回の活動は日本財団の支援を受けて実施された.


【参考】

(参加学生)

 Sarah Parker, Yi Zhang, Travis Roberts, Justin Willig, Nicholas Obolensky,

 Sabrina Brotons, Andrew Erickson (URI), 杉本華織,菊池里紗,玉井友里,

 齊藤純一,太田毅人,中村彬良,桑田恭光(東京大学) 


(参加教員; ロードアイランド大学)

 Robert Thompson(海洋政策学部教授),Timothy George

 (人文科学部教授),Hirotsugu Uchida(環境資源経済学部准教授)


(参加教員およびスタッフ: 東京大学および北里大学)

 黒倉寿(農学生命科学研究科教授),野村一郎(海洋アライアンス上席主幹研究員),八木信行(農学生命科学研究科准教授),福島朋彦(海洋アライアンス特任准教授),大石太郎(農学生命科学研究科研究員),緒方悠香(新領域創成科学研究科研究員),林崎健一(北里大学海洋生命科学研究科准教授),鈴木崇史・冨澤宏介(北里大学海洋生命科学部)


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