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【シンポジウム】第7回東京大学の海研究「人と海のかかわりの将来像」(2012/7/24):Q&Aを掲載しました
2012/08/13

報告:海洋アライアンスシンポジウム

第7回東京大学の海研究

「人と海のかかわりの将来像」


2012年7月24日(火)10:30から,農学部弥生講堂で標記シンポジウムが行われた.海洋アライアンス主催で毎年この時期に行われる同シンポジウムは本年で7回目を迎える.なお,シンポジウムの際に会場から寄せられた質問票について,文末に回答を掲載しています.是非,御覧下さい.


総合司会の木暮教授(大気海洋研究所)による主旨説明から始まり,最初の講演「次期海洋基本計画の課題について」が城山教授(公共政策大学院)からあった.海洋基本法は,2007年施行の海洋に関する基本理念,国等の責務,施策の基本事項などを定めた海洋に関する基本法であり,その中で政府が定める海洋に関する基本的な計画が海洋基本計画である.この計画はおおむね5年毎に見直され,現計画(2008年3月閣議決定)は2013年に変更が見込まれている.城山教授は,東京大学海洋アライアンスと政策ビジョンセンターの共同の作業として,これまでの海洋基本計画における課題を整理し,以下の5点,すなわち,1.海洋空間ガバナンスの強化-日本の管轄海域全体に関するガバナンスの確立-,2.海洋科学技術のガバナンスの強化,3.国際的な海洋ガバナンスへの対応と安全保障,海洋政策推進組織の在り方,5.日本の海洋を支える総合力を有する人材の育成(海洋教育),について提言をまとめつつあるとして,その内容を紹介した.


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会場の様子(演者は城山教授)


海洋アライアンス・海洋教育促進研究センターの窪川特任教授(理学系研究科)は「海洋リテラシーが育む女性進出への期待」を講演し,海洋分野における男女共同参画の実現が社会に多様な視点を導入するとした.海洋基本法にある海洋に関する国民の理解の推進には男女共に海洋リテラシーの向上が必要であり,特に女性の海洋分野への進出は,減少する労働者人口を補うこと,母親の学んだ海洋リテラシーが子供に伝達される点でも重要で,それが海洋国日本の基盤を支えることにつながることを指摘した.


「洋上風力発電と地域・漁業との共生」を講演した公共政策大学院の松浦特任准教授は,洋上風力発電の導入に際しては,その利害関係者である地域住民や漁業権者との共生が必要なことは国も認識しているが,実際の政策措置は遅滞しており,社会要請の高まりを素早くくみ取っているとは言いがたいと指摘した.その上で自らが洋上風力発電における事業者・利害関係者相互の意見を聞く円卓会議を主催し,そこで話し合われた内容や浮き彫りになった課題から政策提言をまとめて紹介した.また,風力発電を含む再生エネルギー設置についての課題として,漁業権・漁業補償の見える化とリスクヘッジ,地域による投資と利益の回収,国策としての現実的な洋上風力導入,現実的な自然エネルギーの導入政策について言及した.


新領域創成科学研究科の斎藤教授は,岩手県大槌町赤浜地区にある津波で被災した東京大学大気海洋研究所の国際沿岸海洋研究センターの屋上にマイク,カメラ,気象センサーを設置した.更に,研究センターが湾内に入れている海水温のデータや,海中マイクの水中音を取得して,現在,これらを「ライブ配信」している.こうして取られた音や映像,気象海象データは,ライブモニタリングとしてデータの蓄積も行っている.遠く離れた被災地をインターネットを通じて日々の自然の営みや復興の気配をリアルに感じることで,その地と個人の距離を近づけることが出来ると共に,逆に現地にいると気づかないことが意識出来る.こうした感性情報を数値データと抱き合わせることで,人の感覚と記憶に埋め込まれる環境イメージを一体としてモニタリングすることが出来る「環境プロファイリング」という新手法を解説した.


大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターの佐藤准教授は,「バイオロギングがもたらす新しい海洋情報」について講演した.近年における記録計の小型化によって,これまでアザラシやペンギンといった比較的大型の動物に用いられていた生物個体の行動記録が,オオミズナギドリやサケにまで応用出来るようになってきた.また,小型化だけでなく,記録出来るデータ種も豊富になってきている.講演ではウミガメやペンギンを例に「動物カメラマン」が自ら撮影した映像を説明すると共に,こうした動物による観測が,海洋データの政治的空白海域にまで応用出来る可能性を示唆した.


浅海岩礁地帯では,近年,藻場が消失する「磯焼け」という現象が問題化している.藻場は魚介類の産卵・生育の場であり,その消失は生態系としても水産上も深刻である.新領域創成科学研究科の山本特任准教授は「藻場再生と沿岸環境」の中で,磯焼けの一因とされる海水中の溶存鉄分の不足について講演した.鉄は海藻類の生理上必須元素であるが,本来陸上から沿岸に供給される.その鉄が河川のダムなどの人工構造物によって,流れが分断されていると考えられている.山本特任准教授は,製鉄の際にでる鉄分の高い副産物(スラグ)と堆肥(腐植物質として)を海岸に設置する実証実験を行い,そこから溶出する鉄分の藻場再生効果について報告した.この技術は全国各地で実証試験が行われ,既に実用化に向けた段階にある.その一方で,本技術の詳細なメカニズムなどの根源的な知識については研究の余地があり,今後も引き続き室内実験と現場のモニタリングを多角的に進めていくことなどを紹介した.


大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターの河村教授は,「東日本大震災後の沿岸生態系の変遷」について講演した.河村教授のグループは,東北地方沿岸で20年以上にわたり,底生生物や海藻海草群落の定量調査を断続的に行ってきた.その調査と比較することで,東北地方太平洋沖地震とそれによる津波が及ぼした沿岸生態系への影響を考察した.津波の影響は生物種によって異なり,大型海藻では小さく,海草では場所によって壊滅的であった.底生生物についても種によって,また,成長段階によって異なる影響を受けていた.エゾアワビの場合,大型海藻群落の中に生息し,付着力の強い親貝は5割以上が生残したが,3cm以下の子貝は大幅に減少していた.このことから現在のような漁獲が続けば親貝が減少し,産卵規模が全体的に低迷し,子貝の減少によって本来ならばこれらが漁獲サイズに加入すべき数年後に資源量が急落することは明らかである.アワビばかりでなく東北太平洋岸の生態系は数千年スケールで存在してきた.その間には大きな津波を幾度となくかいくぐってきており、その都度,崩れたバランスを回復して持続してきている.しかし,近年の漁業活動による特定種の漁獲は,立ち直ろうとしている生態系のバランスを大きく崩しかねず,結果的に漁業生物資源を失いかねない.こうした資源への配慮が,漁業・水産関係者に必須であることが指摘された.


「東北地域の新たな漁業への道筋」を講演した農学生命科学研究科の千田客員研究員は,今回の東北地方太平洋沖地震の震災による水産関連の経済的被害を総覧した後,震災前の日本の水産業の置かれている状況は既に悪化していたこと,その中で沿岸の漁業生産は漸減とはいえ比較的安定していたことを指摘した.それでも,沿岸漁業の漁労利益は赤字が拡大し,多数の低収益の漁家と少数の成功した漁家の二極化が進んでいたこと,赤字経営となっている漁村集落の多くが漁業人口の減少と高齢化に直面している状況で,こうしたところに津波が発生した.したがって,存続が限界で時間の問題となっている経営体全てを救済することは,予算的制約から困難であり,公的機関による効率性と公平性をどうバランスよく判断していくのかが問われている点,様々な住民サービスを含み,文化や歴史を持つ漁村の限界集落化については,住民自らが漁業権漁業の排他性から一歩踏み出し,周辺社会との連携による漁村の新たな価値を作り出すことも必要であるとした.


最後に,サステイナビリティ学連携研究機構の住教授は,地球全体の枠組みで,私たちの社会がどのような方向に向かうのか「地球システム変遷から見た将来予測」として講演した. 地球という自然のシステムの上に成り立つ人間社会の活動が,地球システム自身に影響を与えるようになってきた.今後,人間社会が地球システムの上に維持存続していくためには,地球システムの変動特性を知り,人為的影響を地球システムに及ぼさないレベルに抑えることが必要である.地球は一つしかなく,比較するものがないために,不完全でもシミュレーションに頼ったリスク管理をせざるを得ないこと,また,人為的影響を最大限抑制するということは,人間の欲望を制御することであり,地球上に人々がいかに科学的基盤の上に立って合意形成をしていくかにかかっていると解説した.


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質疑応答風景(演者は住教授)


参加人数は200名を越え,各講演の後には聴衆との間で密度の高い質疑が行われた.

(文責:野村英明(大気海洋研究所))


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-- プログラム --

講演要旨集のダウンロード:7th_Ocean_Alliance_symp_abstractS.pdf


企画の主旨

              木暮一啓(副機構長,大気海洋研究所)

次期海洋基本計画の課題について

              城山英明(公共政策大学院)

海洋リテラシーが育む女性進出への期待

              窪川かおる(理学系研究科)

洋上風力発電と地域・漁業の共生

              松浦正浩(公共政策大学院)

ライブモニタリングによる環境プロファイリング

              斎藤 馨(新領域創成科学研究科)

バイオロギングがもたらす新しい海洋情報

              佐藤克文(大気海洋研究所)

藻場再生と沿岸環境

              山本光夫(新領域創成科学研究科)

東日本大震災後の沿岸生態系の変遷

- 生物資源を持続的に利用し続けるために必要なこと -

              河村知彦(大気海洋研究所)

東北地域の新たな漁業への道筋

              千田良仁(農学生命科学研究科)

地球システムの変遷からみた将来予測

              住 明正(サステイナビリティ学

                        連携研究機構)

閉会の辞

              浦 環(機構長,生産技術研究所)


<><><><><> 質問票に対する回答集 <><><><><>


海洋アライアンスから,シンポジウムの時間内で応えられなかった質問に関して,各専門家からお答えいただきましたので,ご紹介します.


質問文は趣旨を変えないように清書してあります.コメント及び専門的な数式等に関する質問はここでは掲載していません.


<質問> 東北太平洋岸を含め全国的に湾,入り江の全てで紹介されたような研究(実見,生物的分析,動態的変動,海洋データ等)がなされているのでしょうか?


<回答:河村知彦(大気海洋研究所)> シンポジウムでお話したような,底生生物の定量的調査が長期間継続して行われている場所はかなり限定されます.短期間に特定の生物や環境を対象にした調査は数多くありますが,何年にもわたって同じ場所で同じものについてモニタリングしている例は非常に少ないです.プランクトンや水質の調査については各県の水産試験場などで継続して実施している場合がありますが,潜水調査が必要な項目などについてはほとんどないと思います.物理・化学環境についても生物の組成や密度についても季節変化や年変動がありますので,通常の状態を把握するにはかなり長期にわたって継続した調査が必要ですが,そのような直接的な研究成果の出にくい観測には研究予算が付きにくいので,なかなか行われていないのが実情です.今回の大地震・大津波でそのような長期的な観測(これをモニタリングと呼びます)が重要なことが再認識された(それがないと過去の状態がわからない)と思いますが,今後そのような地道な研究に予算が付くことを望みます.


<質問> 沿岸域の海洋・陸域をあわせたトータルの海洋生態を調査する観測,データの分析・解析は,今後,国家的に進める方向なのでしょうか?


<回答:河村知彦(大気海洋研究所)> 海洋に係わる総合的な観測を国家的に進めるという機運は,今のところ残念ながらないように思います.震災の影響調査や復興に係わる部分では,国家予算が付いて動き出していますが,それが一段落したあとも続くとは到底思えません.そうなると良いのですが.


<質問> 政治的に研究調査が難しい海域であってもバイオロギング科学を用いれば,調査が可能になるかもしれないとありましたが,そのような海域では調査研究とその成果としての経済的活動が自国の意思に反して行われてしまう可能性があるために,調査研究が実施不可能なのだと思います.どういう観点から,こうした海域,地域にバイオロギングによる調査研究が適用出来るとお考えなのでしょうか?


<回答:佐藤克文(大気海洋研究所)> 他国の海域に調査船を入れたり,他国の領土内で調査をするにあたっては,相手国の了承を得る必要があります.しかし,別の場所で装置の取り付けを行った動物が,動物の意思で他国の海域に行きそこでデータをとったのち再び装着地点に戻ってくる,もしくは衛星経由でデータを送ってくることによって,データの入手は可能です.


<質問> 水中バイオロギングの対象をウミガメ・マンボウを紹介されたが,これらはある程度大型生物で近海で遊泳するという条件のようです.講演ではヒラメ,サケがありますが,他に,例えば大型回遊魚の研究例はありますか?


<回答:佐藤克文(大気海洋研究所)> ウミガメもマンボウも近海に留まること無く北太平洋を広く移動します.他に,大型回遊魚としてはマグロに装置を取り付けて実施した研究例があります.


<質問> バイオロギングプロジェクトの目的対象生物の選定理由を教えてほしい.


<回答:佐藤克文(大気海洋研究所)> 多くの場合,その対象動物の生態に興味を持つ研究者がいるということがその選定理由となります.


<質問> 動物を利用するモニタリング(動物による海洋調査)の実用の時期はいつ頃でしょうか?


<回答:佐藤克文(大気海洋研究所)> 既に多くの研究例があります.欧米の研究者を中心になされたプロジェクトとしては,以下のものがあります.http://www.topp.org


<質問> 海洋教育について,提言では初等中等教育の段階において「海洋教育」を教育課程に位置づけています.しかし,脱ゆとりの流れで,基本学習項目が増加し,新たな教育を行うことは難しいように感じます."子供の時間は有限"という制約下で,どうやって海洋教育の優先順位を高めて,他の分野より優先して教えるべきと説得するのでしょうか?


<回答:宮崎活志(理学系研究科)> ご指摘のとおり,「学校週5日制」が完全実施された平成14年以降,小・中・高等学校等の授業時数は減少しており,各学校では,学校行事の精選や夏季休業日の短縮など様々工夫して授業時数の確保に努めています.

 ところで,海洋教育の充実に向けた提言は,新たに教科「海洋」を設定することを求めるものではありません.海洋に関する指導内容はすでに,社会科や理科,技術・家庭科などいくつかの教科で扱われており,国語や音楽,図工,美術などでは海を題材とした教材も用いられています.

 提言は,これからの我が国の発展の基盤となる海洋について,子どもたち一人一人が「海と人との共生」を目指し,各教科等で学んだことを,海洋に関する豊かな教養として育むことができるような教育課程を工夫していただきたいと願うものです.例えば,総合的な学習の時間の中で海洋に関する子どもたちの探究的な学習や体験的な活動を支援したり,海洋に関わる学校行事(特別活動)を工夫したり,海洋を題材とした教科横断的な学習活動を設定するなど,現状の学習活動の中で「海洋教育」の充実を図ることができるものと考えます.

 そのため,各学校の教育課程の基準となる学習指導要領の総則に海洋教育の重要性を記述して,先生方が様々な工夫をしていただくことができるようにする.また,総合的な学習の時間で取り上げる横断的・総合的な学習課題の一つとして「海洋」を例示することを提言しています.それらは,現状の学校教育の枠組みの中での海洋教育の充実を求めるものであり,子どもたちの負担を増したり,他の教育内容に優先することを求めたりするものではありません.御理解のほどお願いいたします.


<質問> 海洋教育について,内陸県の子供に,海洋教育をどのようにして効果的に実施するか,実効的手法としてはどのようなことが考えられますか?


<回答:宮崎活志(理学系研究科)> 学習指導要領の中に海洋教育を位置付けるということは,我が国のすべての学校で海洋教育を進めていただくことを意味します.しかし,都市部の学校や山間地の学校など,海が近くにない学校,海洋に関する教育資源が近くにない学校では,子どもたちの海洋に関する学習活動を展開するには多くの困難を伴うことが予想されます.

 しかし,「山は海を育てる」という言葉が示すように,緑豊かな山と結ばれる海には豊かな漁場があります.川も含め,大地と海洋の水の循環システムが私たちの自然環境を支えています.また,私たちが摂取する動物性タンパクの約4割は水産物によるものであり,輸出入貨物の99%を海上輸送に依存しています.さらに将来は,金や銅などの海底鉱床,メタンハイドレートなどの非生物資源,波力や海流などを利用した発電など,海は,私たちの豊かな生活を支えてくれるものとして期待されています.言い換えれば,現在も将来も,すべての人々が海との関わり無くしては生活できないのです.

 海が近くにない学校でも,私たちの生活を支える海洋の管理や資源・エネルギーの学習,森・川・海の環境学習,水産物と流通,調理等の学習など,総合的な学習の時間で子どもたちが探究的な学習を行うよう工夫したり,各教科の学習で海洋に関する教材を多く取り上げたりするなど,海が近くにないからこそ海を学ぶ,という学習活動を進めていただくよう期待しております.


<質問> 漁業者の取り分を農家並に上げるには,どんなことが考えられるでしょうか.


<回答:千田良仁(農学系研究科)> 流通・加工システムの効率化が重要である.最も効率的なのは産地と消費地の直接取引であるが,その仕組みを作るためには,産地側で加工・保存機能や目利きの技術,販売のノウハウを持たなければならない.


<質問> 放射性物質が海に堆積してきている影響はどんなものでしょうか.魚が安心して食べられるようにするにはどうすべきでしょうか?


<回答:千田良仁(農学系研究科)> これまでの研究から,海産魚の放射性セシウムの濃度は,海水中の放射性物質の濃度が上がれば高くなり,逆に,下がれば徐々に排出されて50日程度で半分程度に減少することが分かっており,水産物中に含まれる放射性物質の調査に加えて,海水中の放射性物質の濃度のモニタリングが重要だといえます.

魚を安心して食べられるようにするためには,国の基準を超えた魚を流通させない漁業者の取り組み,流通段階でのトレーサビリティを確保に真摯に取り組んでいくことが重要です.


<質問> 開かれた漁業・漁村とありましたが,その具体的イメージが方向性にはなかったように思います.どのような姿をお考えか教えて下さい.


<回答:千田良仁(農学系研究科)> 漁業権等制度的な問題もありますが,既存の流通段階は多層に渡っており,漁業者には取った魚の価格がわかるだけで,その魚がどのような消費者に食べられているか分からない.漁業者も消費者に積極的に魚の情報を提示しなかったことが漁業・漁村が閉ざされたイメージを持つ原因であると考えられます.まずは,漁業者自らが魚の鮮度や漁業・漁村の情報など,水産物にストーリー性を付加した情報発信を始めることが必要です.


<質問> 「開く」ことに対しては,六次産業化のリスクと同様のリスクを生じるのではないかと思いますが,対策としての考え方をお示し頂ければと思います.


<回答:千田良仁(農学系研究科)> 漁業者の主体性が問われます.単に魚を採ってきて水揚げしたら終わりという「単なる生産者」ではなく,電子商取引等を活用するなど,その魚がどれくらいの価格でどのような消費者に食べられているかを知り,それに応じて漁業に取り組むという意識を高めていく必要があります.


<質問> 風力発電を設備設置する地元へのメリットはあまりないという印象を受けましたが,メリットがないと建設への地元説得が難しいと思います.どのように説得をすればよいのでしょうか?


<回答:松浦正浩(公共政策大学院)> メリットがない事業を地元が喜んで受け入れるはずはありません.売電収入,雇用,観光など何らかの形でメリットが地元に落ちるような仕掛けをつくる必要があります.


<質問> 洋上風力発電で国内で浮体式がいくつぐらいに設置出来るか,試算はあるのでしょうか?また,中国,イギリスなど海外の事例として増えてきているものは,着床式と浮体式,どちらが多くなっていますか?


<回答:松浦正浩(公共政策大学院)> 環境省の試算があります(http://www.env.go.jp/earth/report/h23-03/chpt4.pdf).海外事例はほぼすべて着床式です.


<質問> 洋上風力発電の効率性について(発電能力,無風状態の時は年間でどのくらいか),建設費用,環境への負荷について教えて下さい.


<回答:松浦正浩(公共政策大学院)> NEDOの資料(http://www.nedo.go.jp/content/100116324.pdf)や環境章資料(http://www.env.go.jp/policy/assess/5-2windpower/wind_h22_5/mat_5_3.pdf)をご参照ください.無風では全く発電しません.現時点では効率性,環境影響その他について十分なデータがないということで,国内では,政府主導の実証実験が進められている段階です.


<質問> なぜ,風車は大きくなるのでしょうか.小さい風車を数でまかなえないのですか?


<回答:松浦正浩(公共政策大学院)> 規模の経済(発電量あたりのメンテナンス費用や基礎部や送電線の設置工事費用などの縮小)のため,風車を大規模化することで採算性が高くなります.特に洋上の場合は高い採算性が求められます.規模の小さい風車によるウィンドファームは事業として成立しないと考えられます.


<質問> 鉄を供給することで海藻の生長が良いというのはわかりましたが,実際に鉄が原因で磯焼けしている場所というのは,本当にあるのでしょうか?


<回答:山本光夫(新領域創成科学研究科)> ご質問の通り,鉄の藻場生態系への影響について評価・検討を行うことは重要であると考えられます.現在,鉄供給による藻場修復・造成への効果を確認していると同時に,沿岸域において鉄が海藻生育や沿岸環境に与える影響についても研究を進めています.


<質問> スラグ中には重金属は入っていないのでしょうか?生育された海藻中の重金属濃度などは測定されているのでしょうか?海藻の安全評価として.


<回答:山本光夫(新領域創成科学研究科)> スラグ利用の安全性については,鉄鋼各社・業界において環境省の環境基準を満たす製品としての溶出試験や,試験海域におけるリスク評価によって,環境への影響がないと考えられることは示されています.(例えば,下記URLに記載があります(http://www.slg.jp/publication/slag.html))

 一方で海藻の安全評価に関しては産学で取り組んでおり,海藻中の重金属濃度の測定からは,これまでのところ問題は見られておりません.これらの知見に基づき,産学が連携して更に詳細な検討を進めています.


<質問> 鉄と栄養塩濃度の比によっても生長に違いがあるとのことでしたが,そうであれば実海域でうまくコントロールするのは難しいのではないでしょうか?また,鉄の効果がない漁場もあるのではないでしょうか?


<回答:山本光夫(新領域創成科学研究科)> 藻場修復・造成を行うためには,対象海域における海藻成長への制限因子が何かを把握することが重要と考えられます.従って,鉄供給の効果を確実に得るためには,その海域の栄養塩も含めた濃度の把握など,海域環境の状況を踏まえて実施する必要があると考えています. 鉄と栄養塩濃度の比による効果の差等も含めて,実海域での鉄添加効果の評価に向けた基礎的な検討を続けております.


<質問> 講演では,すぐにでも事業化が出来そうな感じを受けたが,いつ頃事業化出来ますか.


<回答:山本光夫(新領域創成科学研究科)> 本技術の概要や展望に関しては,東京大学海洋アライアンス編『海の大国ニッポン』(「"磯焼け″の海を豊かな藻場に再生 鉄による海の緑化」(58~61ページ))に記載があります.また本技術は産学連携研究としてスタート致しましたが,事業化に向けては企業側を中心とした取り組みがなされており,以下のような文献があります(堤直人ら「環境資材としての鉄鋼スラグの有用性について」ふぇらむ, 17 (2012) 539-549).これらをご参照頂ければ幸いです.


<質問> 釜石での海底の水質の調査結果を知りたい.是非,地元関係者に報告する機会を設けてほしい.


<回答:山本光夫(新領域創成科学研究科)> 本調査につきましては,当初より釜石市とは連絡・報告を行いながら進めております.既にこれまで地元関係者への報告の機会は設けておりますが,今後もより多くの地元関係者に報告する機会を設けていきたいと考えています.

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