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活動報告

【報告】東北地方太平洋沖地震:震災復興調査学内報告会第2回を開催(2011/8/26)
2011/11/25

海洋アライアンス

東北地方太平洋沖地震に関する震災復興調査

第2回学内報告会


2011年8月26日(金)17時から,本郷キャンパス旧理学部1号館150号室にて標記セミナーが行われた.前回の報告会(6月14日)に引き続き,震災復興調査の報告6件と総合討論が行われた.あいにくの豪雨のため,前回よりも参加者は少なかったが,情報が整理されたなかで,密度の高い情報交換の場となった.


【プログラム】

1.海洋アライアンスの取り組みと震災復興調査の概要 

野村英明(大気海洋研究所)

2.大槌町復興まちづくり支援にかかる基礎調査 

窪田亜矢(工学系研究科)

3.岩手県船越湾および大槌湾の海草藻場に及ぼした津波の影響に関する研究

大瀧敬由(新領域創成科学研究科)

4.岩手県釜石の漁業と沿岸域環境に関する調査

多部田茂(新領域創成科学研究科)・山本光夫(教養学部)

5.水中ロボットによる宮城県南三陸町の海底状況調査

高川真一(生産技術研究所)

6.総合討論

司会:野村(大海研)


最初に野村特任研究員が登壇し,海洋アライアンスが行った第1次から3次までの震災復興調査の主旨と取り組みの経緯を説明し,それから具体的な調査報告が始まった.


窪田准教授は都市工学を専門とする立場から,岩手県・大槌町の住民たちが中心となった復興屋台プロジェクトや赤浜まちつくり支援の様子を紹介し,町つくりのあるべき姿と課題を解説した.後半は大槌町の中で,窪田准教授が中心に活動している赤浜地区の再生復興計画が重点的に紹介された.大槌町には大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センターがあり,この度の津波により建物の最上階3階部分まで波を被り,調査船や水槽等全ての施設が被災した.そのため,大槌町ばかりでなく岩手県も,東京大学がこの地から撤退するのではないかとの懸念を抱いていたが,東京大学が大槌に留まることを早期のうちに表明したことは,大槌町にとって明るいニュースであり,町内には安堵の気持ちが広がったとのことであった.報告の時点では,町内自体が混乱しており,まちづくりの方向性についての着地点が,住民の中にイメージされていない段階であった.まちづくりは,1)危険度に合わせた住居の配置,2)順位の高いものから着手する,という二段階で行い,「助命ネットワーク」「鎮魂と学びの場」「自立した生活圏」と行った前提で進めることを提案している.


修士課程1年の大瀧大学院生は,小松准教授(大気海洋研究所)と伴に生態系サービスの価値の高い海草藻場を対象とした調査を行い,今回の津波の影響が湾口では小さかった一方で,湾奥部ではタチアマモなど壊滅的な影響を受けていた事例を報告した.藻場は水産の基盤であるとの立脚点から,藻場をサイドスキャンソナーと水中カメラを用いて,大槌湾,船越湾の広範囲を調査した.精力的な調査により,海草・海藻の繁茂状況やウニ,アワビなどの生物資源の様子を含めて調べ,今後の変化を追跡していくとの発表であった.


山本准教授と多部田准教授の報告は沿岸域環境調査とそれに関連する漁業影響ヒアリング調査の結果である.釜石ではサケの定置網からの水揚げが大きい産額を持っている.水産の復興を考えた場合,漁業を行っている水環境から漁港,さらに流通,そして消費までのトータルのつながりが整備されていることが必要である.その起点にある漁業環境の要素である栄養塩,重金属などの水質情報は大切である.山本准教授は主に水質の調査を行い,環境基準値を超える重金属は検出されなかったことを明らかにした.重金属については今後も監視していくとのことであった.また,釜石湾漁協からの依頼により,遠隔操作型水中カメラを使って,湾内の様子を調べ,その時の様子も報告した.

多部田准教授は漁場から消費地までの影響をトレーサブル・サプライチェーンを追跡する形でヒアリングを行い,その結果をもとに津波の影響を考察した.聴き取り調査によれば,水産物のサプライチェーンサイドは,特に重金属の検出を不安に思っている.また,地盤沈下で港が使えない状況にあるが,唐丹漁協の場合,ワカメを首都圏の生活協同組合と契約し,販売ルートを持っているため,水揚げさえ出来れば商売が開始出来るという例もあることが報告された.


高川特任教授は,7月から8月にかけて,石巻,気仙沼,宮古で実施した水中ロボットによる漁場環境調査を行い,津波の影響が海底にも大きく及んでいる一方で4ヶ月を経て回復の兆しの見えていることを報告した.


最後に総合討論では,それぞれの調査内容・結果の関連性と今後の取り組みのあり方について,予定時間を超える意見交換が行われた.こうした幅広い分野の専門家による意見交換を積み重ねることにより,効率的かつ有効な復興プランが描かれることを期待したい.


附記:今回のセミナーは前回に引き続き,海洋アライアンスイブニングセミナーの第13回目として行われた.同セミナーは海洋アライアンスのメンバーの相互理解と親睦を深めるために研究を紹介し合うのが趣旨である.


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