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【報告】東北地方太平洋沖地震:震災復興調査学内報告会第3回を開催(2011/10/12)
2011/11/24

海洋アライアンス震災復興調査 第3回学内報告会


2011年10月12日(水)18時から,本郷キャンパス旧理学部1号館150号室で標記報告会が行われ,およそ15名が参加した.当初のプログラムは以下の通りであったが,講師の事情により講演3はキャンセルされた.


【プログラム】

1.海洋アライアンス震災復興調査の概要

野村英明(大気海洋研究所)

2.名取市・石巻市の水環境調査

穴澤活郎(新領域創成科学研究科)

3.地形,土地利用,津波襲来域の分布特性の比較地理的検討

須貝俊彦(新領域創成科学研究科)

4.仙台平野海岸域の被災実態と復興計画の現状

石川幹子(工学系研究科)

5.総合討論

司会:野村(大海研)


 野村特任研究員の「海洋アライアンス震災復興調査の概要」では,まず海洋アライアンスの震災への対応について,震災から1週間後の開始から時間経過を追って説明があった.継いで3次にわたる震災復興調査の派遣時期と場所が示され,その中から今回の講演の調査対象区域と時期が紹介された.

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 穴澤准教授の「名取市・石巻市の水環境調査」では,対象地域における震災6週間後の滞留水及び土壌の調査結果が報告された.一般に浸水域は目視によって判定されるが,水試料の元素分析をして海水に特徴的な成分構成を知ることで科学的に明瞭に区分することが出来ること,追跡調査は必要であるが,調査した観測地域においては,いわゆる塩害は1年程度で収束しそうであること,当初心配されたガレキ等からの重金属汚染は調査時点では観察されなかったことが報告された.

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 石川教授の「仙台平野海岸域の被災実態と復興計画の現状」では,三陸地方のリアス式海岸と仙台平野では津波の被災経験の有無が異なり,後者ではゼロからの復興計画になることが指摘された.明治期の土地利用を比べると,名取市はそれまで人の住んでいないところを宅地化し,そこで多くの人が亡くなっていた.これに対し,岩沼市は開発が進まなかったために明治期の土地利用が色濃く継承され,低地に人口が少なかったため人命被害を低く抑えられたらしいこと,また,地盤沈下した住宅地域はかつての後背湿地や湖沼であり,宅地化以前に「土地の履歴」を調査することが必要であることが示された.

 今回,地元に密着した調査から,ほんの少しの高台で助かった例もあり,自然の「微地形」をうまく利用することや,津波の減衰ポイントを複数設けることで津波の破壊力を減少させることは可能であり,万里の長城のような連続的な海岸護岸堤を建設する必要は必ずしもない.平野部の復興計画は,「多重防御」の観点から,「減災」を軸に,自然と共生した新しい復興計画は進めることが望ましい.

 岩沼市は住民に占める漁業者の割合が低かったこと,リーダーの存在により,早い時期に住民一致の合意が出来,集団移転が決まったため,既に新しい街作りが進んでいる.一方,亘理町では海に濃く依存する漁業者とそれ以外の住民で移転の有無で意見が分かれ,防波堤を二重にするなどの従来型の防災計画が案として出されているものの,復興への道筋は決まっていない状況にあるとの報告があった.

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 最後に総合討論では,早い時期での具体的な計画が必要であること,海洋アライアンスから多様な提言やシナリオが出ることが重要といった意見が出された.災害を受けた地域は7ヶ月が過ぎ,やや落ち着きつつある.石川教授から,震災復興は本格的に動き始めたところであり,科学的合理性のある提案がまさに今必要とされている点が強調された.合意形成は時間と共にとりづらくなることは明らかで,復興の目標となる提案を,利権等のしがらみのない大学人が複数提示することで,産官学連携の下それらを検討し,場合によっては部分的に取捨選択することで,復興の道筋をより早く決定し,地域社会が安心出来るよう政策が固まることが望まれる.

(野村英明 大気海洋研究所)


附記:今回のセミナーは前回に引き続き,海洋アライアンスイブニングセミナーの第14回目として行われた.同セミナーは海洋アライアンスのメンバーの相互理解と親睦を深めるために研究を紹介し合うのが趣旨である.

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