生涯学習プログラム

「グレーター東大塾」第3弾:海洋生物のポテンシャルを求めて


東京大学 卒業生室 社会連携部の実施する生涯学習プログラムの講義型プログラム「グレーター東大塾」.第2弾に引き続き第3弾も海洋アライアンスが全面協力することとなり,第1回目の講義が,2012年4月10日,経済学研究科 学術交流棟・小島ホールにて開始された.


グレーター東大塾は,卒業生が生涯にわたって大学と絆を持ち続け,世界的視野に立って,公正な社会の実現や科学・文化の創造に貢献し続ける為の仕組みとして立ち上げられた企画で,先端専門性に焦点を置いて,現実社会での身近なテーマを取り上げ,一般教養の講義レベルを超え,第一線の課題に取り組み,大学と社会が問題解決するネットワークの構築を目的としている.

 詳しくはこちら http://tsii.todai-alumni.jp/gtc/

 パンフレット  TODAI_Greater03_WEB.pdf


近年続々と海洋の新たな種が発見され,新たな生物として食品や素材として海洋生物資源に加わった.これら生物がもつポテンシャルには世界中が注目している.広大な経済的排他水域を持つ日本は,亜熱帯から亜寒帯,沿岸から沖合,さらには表層から深海までの海洋環境に生息する多様な海洋生物に恵まれており,上手に利用すれば無限に使用できる資源である.本講座は海洋生物のもつポテンシャルを紹介し,「海洋新時代と生物資源」「生物利用の可能性」について,様々な専門の立場から多角的に議論する.


今回は,古谷研教授(農学生命科学研究科)を塾長,福島朋彦特任准教授(海洋アライアンス)を副塾長に,2012年7月24日まで14回の講義が行われる.


報告:海洋学際教育プログラム 平成23年度修了式


2012年3月23日(金),旧理学部1号館150号室において,平成23年度海洋学際教育プログラム修了式が行われた.第2期の修了生となった本年度は,理学系研究科から2名,工学系研究科から1名,農学生命科学研究科から2名,新領域創成科学研究科から10名,公共政策学教育部から3名の18名が修了した.


式は,木村伸吾副機構長(新領域創成科学研究科自然環境学専攻教授)の進行とともに開式の辞で開式し,浦 環 機構長(生産技術研究所教授)の挨拶に続いて,修了生一人一人に大学院横断型教育プログラム「海洋学際」修了証と海洋アライアンスからの記念品「海の大国ニッポン」(著:海洋アライアンス編)が手渡された.修了生代表の佐藤祐樹さん(新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻修士課程修了)から答辞が述べられ,浦辺徹郎副機構長(理学系研究科地球惑星科学専攻教授)の閉式の辞をもって閉式した.


その後,山上会館「御殿」において,教育プログラム修了生及び教職員の昼食会が開催され,盛会のうちに閉会した.


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修了式後の記念撮影

理学系研究科 茅根研究室 修士3年の青木健次君が,

日本沿岸域学会研究討論会2011において

優秀講演賞を受賞しました

 

  発表タイトル:沖縄県西表島北東バラス島の変化とその要因

  発表者: 青木健次・本郷宙軌・茅根 創・山野博哉・髙橋研也・

       片山裕之・関本恒浩・磯部雅彦

 

この研究は海洋アライアンスのイニシャチブで採択された「海面上昇に対する沖ノ鳥島の生態工学的維持」のなかで実施(代表 茅根創 理学系研究科教授)」された研究です

 

本HPでも既に紹介済みですが,2009年に沖ノ鳥島研究会のメンバーは沖縄県周辺のサンゴ州島を巡検しました青木君の研究が始まったのはこの時からでした以後,文献調査,室内実験や数値計算などをとおして,サンゴ州島の形成メカニズム解明に寄与する研究が評価されました

http://www.oa.u-tokyo.ac.jp/activity/2009/09/2009930.html


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【報告】海洋学際教育プログラム

2011年度「海洋問題演習」発表会と表彰式


2011年12月19日(月),旧理学部1号館150号室において,海洋学際教育プログラムの2011年度【海洋問題演習】の第2回発表会と表彰式が行われた.第1回発表会は,「震災」を課題に,場の利用・資源の利用・安全な利用の各グループ別に検討した結果の優秀チームによって,11月14日にすでに行われている.第2回は従来の海洋をテーマにした課題で検討し,優秀チームによる発表が12月19日に行われたものである.


発表会には,海洋アライアンスに関係する教員12名ほどが駆け付け,学生たちの成果を評価した.発表後には,所属研究科を超えて,学生から学生へ活発な質疑応答が繰り広げられるなど,部局横断型ならではの展開を見ることができた.また,発表内容に絡めて海洋アライアンスの教員から意見を聞くことができ,受講した学生には大変得難い経験となった.その後,第1回,第2回それぞれに最優秀チームを選出し,それ以外のチームは優秀賞として表彰を行った.表彰者には賞状と副賞が贈られ,懇談会を実施して有意義に終了することができた.


なお,最終的な成績判定は冬学期レポート提出後ではあるが,夏学期のレポート3課題を提出し,異なる研究科在籍学生とチームを組んで発表課題に積極的に取り組んだ姿勢は高く評価すべきことである.海洋問題演習での発表会に臨んだ学生は,法学政治学研究科1名,理学系研究科5名,工学系研究科7名,農学生命科学研究科4名,新領域創成科学研究科10名,公共政策学教育部10名の合計37名である.

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2011年度海洋問題演習の受講学生と海洋アライアンスの教員ら

海洋アライアンスが本郷キャンパスで

中学生を対象にミニ講義を行いました


2011年12月6日(火),山口県の慶進中学校・高等学校(加治英雄校長)の中学生71名の本郷キャンパス訪問があり,事前に連絡を受けていた海洋アライアンス(機構長 浦環生産技術研究所 教授)はキャンパスツアーやミニ講義,パネルディスカッションなどで歓迎した.


中学生の受け入れを担当したのは,海洋アライアンスの福島朋彦特任准教授と窪川かおる海洋教育促進研究センター特任教授だったが,当日は慶進中学校・高等学校の卒業生である理学部2年の河杉翔伍君と文学部2年の小賀野乃花さんが駆けつけてくれた.


修学旅行のバスが赤門に到着すると,早速,河杉君と小賀さんによるミニキャンパスツアーが始まり,いちょう並木,安田講堂,三四郎池,そして小柴博士のノーベル賞メダルが飾られている理学部1号館などに案内された.


続いて旧理学部1号館(150号室)に移動してミニ講義が行われた.生徒たちが独特の雰囲気をもつ大学の講義室を見て目を輝かせていたのが印象的だった.最初に講師を務めたのは福島特任准教授である.講義の最初に同郷の先輩にあたる 故 玉木賢策教授(工学研究科 山口県宇部市出身)の偉業と,名前を冠した海底地形名「玉木海山」が登録された事を紹介すると,会場から驚きの声があがった.続いて登壇した窪川特任教授は,研究者になるまでの道のり,海洋科学と研究航海,最後に海洋生物の研究の話をした.生徒達は,どのようにして研究者になったのか興味深く話しを聴いている様子だった.

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中学生に講義する窪川特任教授


次に,福島特任准教授が司会を務め,窪川特任教授,河杉君,小賀さんの4人によるパネルディスカッションが行われた.大学入学を最終目的にするのではなく,大学卒業後についても考えてみて欲しいと語りかけると,生徒達は自ら手を挙げて,「海洋学者になりたい」,「外国人のための日本語教師になりたい」など自分の夢を発表してくれた.


最初は緊張気味の河杉君と小賀さんだったが,次第に舌も滑らかになり,最後は彼らによるエールで締めくくられた.「常に将来の夢を持っていなくてもいい.そんな時代があってもいいじゃないか.日々を楽しむことも大切にしてほしい」と.


先輩からのエールは,これから受験に巻き込まれてゆく中学生の一服の清涼剤になったものと思う.

海洋アライアンス

東北地方太平洋沖地震に関する震災復興調査

第2回学内報告会


2011年8月26日(金)17時から,本郷キャンパス旧理学部1号館150号室にて標記セミナーが行われた.前回の報告会(6月14日)に引き続き,震災復興調査の報告6件と総合討論が行われた.あいにくの豪雨のため,前回よりも参加者は少なかったが,情報が整理されたなかで,密度の高い情報交換の場となった.


【プログラム】

1.海洋アライアンスの取り組みと震災復興調査の概要 

野村英明(大気海洋研究所)

2.大槌町復興まちづくり支援にかかる基礎調査 

窪田亜矢(工学系研究科)

3.岩手県船越湾および大槌湾の海草藻場に及ぼした津波の影響に関する研究

大瀧敬由(新領域創成科学研究科)

4.岩手県釜石の漁業と沿岸域環境に関する調査

多部田茂(新領域創成科学研究科)・山本光夫(教養学部)

5.水中ロボットによる宮城県南三陸町の海底状況調査

高川真一(生産技術研究所)

6.総合討論

司会:野村(大海研)


最初に野村特任研究員が登壇し,海洋アライアンスが行った第1次から3次までの震災復興調査の主旨と取り組みの経緯を説明し,それから具体的な調査報告が始まった.


窪田准教授は都市工学を専門とする立場から,岩手県・大槌町の住民たちが中心となった復興屋台プロジェクトや赤浜まちつくり支援の様子を紹介し,町つくりのあるべき姿と課題を解説した.後半は大槌町の中で,窪田准教授が中心に活動している赤浜地区の再生復興計画が重点的に紹介された.大槌町には大気海洋研究所附属国際沿岸海洋研究センターがあり,この度の津波により建物の最上階3階部分まで波を被り,調査船や水槽等全ての施設が被災した.そのため,大槌町ばかりでなく岩手県も,東京大学がこの地から撤退するのではないかとの懸念を抱いていたが,東京大学が大槌に留まることを早期のうちに表明したことは,大槌町にとって明るいニュースであり,町内には安堵の気持ちが広がったとのことであった.報告の時点では,町内自体が混乱しており,まちづくりの方向性についての着地点が,住民の中にイメージされていない段階であった.まちづくりは,1)危険度に合わせた住居の配置,2)順位の高いものから着手する,という二段階で行い,「助命ネットワーク」「鎮魂と学びの場」「自立した生活圏」と行った前提で進めることを提案している.


修士課程1年の大瀧大学院生は,小松准教授(大気海洋研究所)と伴に生態系サービスの価値の高い海草藻場を対象とした調査を行い,今回の津波の影響が湾口では小さかった一方で,湾奥部ではタチアマモなど壊滅的な影響を受けていた事例を報告した.藻場は水産の基盤であるとの立脚点から,藻場をサイドスキャンソナーと水中カメラを用いて,大槌湾,船越湾の広範囲を調査した.精力的な調査により,海草・海藻の繁茂状況やウニ,アワビなどの生物資源の様子を含めて調べ,今後の変化を追跡していくとの発表であった.


山本准教授と多部田准教授の報告は沿岸域環境調査とそれに関連する漁業影響ヒアリング調査の結果である.釜石ではサケの定置網からの水揚げが大きい産額を持っている.水産の復興を考えた場合,漁業を行っている水環境から漁港,さらに流通,そして消費までのトータルのつながりが整備されていることが必要である.その起点にある漁業環境の要素である栄養塩,重金属などの水質情報は大切である.山本准教授は主に水質の調査を行い,環境基準値を超える重金属は検出されなかったことを明らかにした.重金属については今後も監視していくとのことであった.また,釜石湾漁協からの依頼により,遠隔操作型水中カメラを使って,湾内の様子を調べ,その時の様子も報告した.

多部田准教授は漁場から消費地までの影響をトレーサブル・サプライチェーンを追跡する形でヒアリングを行い,その結果をもとに津波の影響を考察した.聴き取り調査によれば,水産物のサプライチェーンサイドは,特に重金属の検出を不安に思っている.また,地盤沈下で港が使えない状況にあるが,唐丹漁協の場合,ワカメを首都圏の生活協同組合と契約し,販売ルートを持っているため,水揚げさえ出来れば商売が開始出来るという例もあることが報告された.


高川特任教授は,7月から8月にかけて,石巻,気仙沼,宮古で実施した水中ロボットによる漁場環境調査を行い,津波の影響が海底にも大きく及んでいる一方で4ヶ月を経て回復の兆しの見えていることを報告した.


最後に総合討論では,それぞれの調査内容・結果の関連性と今後の取り組みのあり方について,予定時間を超える意見交換が行われた.こうした幅広い分野の専門家による意見交換を積み重ねることにより,効率的かつ有効な復興プランが描かれることを期待したい.


附記:今回のセミナーは前回に引き続き,海洋アライアンスイブニングセミナーの第13回目として行われた.同セミナーは海洋アライアンスのメンバーの相互理解と親睦を深めるために研究を紹介し合うのが趣旨である.


海洋アライアンス震災復興調査 第3回学内報告会


2011年10月12日(水)18時から,本郷キャンパス旧理学部1号館150号室で標記報告会が行われ,およそ15名が参加した.当初のプログラムは以下の通りであったが,講師の事情により講演3はキャンセルされた.


【プログラム】

1.海洋アライアンス震災復興調査の概要

野村英明(大気海洋研究所)

2.名取市・石巻市の水環境調査

穴澤活郎(新領域創成科学研究科)

3.地形,土地利用,津波襲来域の分布特性の比較地理的検討

須貝俊彦(新領域創成科学研究科)

4.仙台平野海岸域の被災実態と復興計画の現状

石川幹子(工学系研究科)

5.総合討論

司会:野村(大海研)


 野村特任研究員の「海洋アライアンス震災復興調査の概要」では,まず海洋アライアンスの震災への対応について,震災から1週間後の開始から時間経過を追って説明があった.継いで3次にわたる震災復興調査の派遣時期と場所が示され,その中から今回の講演の調査対象区域と時期が紹介された.

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 穴澤准教授の「名取市・石巻市の水環境調査」では,対象地域における震災6週間後の滞留水及び土壌の調査結果が報告された.一般に浸水域は目視によって判定されるが,水試料の元素分析をして海水に特徴的な成分構成を知ることで科学的に明瞭に区分することが出来ること,追跡調査は必要であるが,調査した観測地域においては,いわゆる塩害は1年程度で収束しそうであること,当初心配されたガレキ等からの重金属汚染は調査時点では観察されなかったことが報告された.

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 石川教授の「仙台平野海岸域の被災実態と復興計画の現状」では,三陸地方のリアス式海岸と仙台平野では津波の被災経験の有無が異なり,後者ではゼロからの復興計画になることが指摘された.明治期の土地利用を比べると,名取市はそれまで人の住んでいないところを宅地化し,そこで多くの人が亡くなっていた.これに対し,岩沼市は開発が進まなかったために明治期の土地利用が色濃く継承され,低地に人口が少なかったため人命被害を低く抑えられたらしいこと,また,地盤沈下した住宅地域はかつての後背湿地や湖沼であり,宅地化以前に「土地の履歴」を調査することが必要であることが示された.

 今回,地元に密着した調査から,ほんの少しの高台で助かった例もあり,自然の「微地形」をうまく利用することや,津波の減衰ポイントを複数設けることで津波の破壊力を減少させることは可能であり,万里の長城のような連続的な海岸護岸堤を建設する必要は必ずしもない.平野部の復興計画は,「多重防御」の観点から,「減災」を軸に,自然と共生した新しい復興計画は進めることが望ましい.

 岩沼市は住民に占める漁業者の割合が低かったこと,リーダーの存在により,早い時期に住民一致の合意が出来,集団移転が決まったため,既に新しい街作りが進んでいる.一方,亘理町では海に濃く依存する漁業者とそれ以外の住民で移転の有無で意見が分かれ,防波堤を二重にするなどの従来型の防災計画が案として出されているものの,復興への道筋は決まっていない状況にあるとの報告があった.

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 最後に総合討論では,早い時期での具体的な計画が必要であること,海洋アライアンスから多様な提言やシナリオが出ることが重要といった意見が出された.災害を受けた地域は7ヶ月が過ぎ,やや落ち着きつつある.石川教授から,震災復興は本格的に動き始めたところであり,科学的合理性のある提案がまさに今必要とされている点が強調された.合意形成は時間と共にとりづらくなることは明らかで,復興の目標となる提案を,利権等のしがらみのない大学人が複数提示することで,産官学連携の下それらを検討し,場合によっては部分的に取捨選択することで,復興の道筋をより早く決定し,地域社会が安心出来るよう政策が固まることが望まれる.

(野村英明 大気海洋研究所)


附記:今回のセミナーは前回に引き続き,海洋アライアンスイブニングセミナーの第14回目として行われた.同セミナーは海洋アライアンスのメンバーの相互理解と親睦を深めるために研究を紹介し合うのが趣旨である.

千葉県浦安市の小学校で出前授業


八木信行准教授(農学生命科学研究科)が,2011年11月2日(水),海の魅力を伝えるための出前授業を,浦安市立明海南小学校5年生約120人を対象に実施した.この小学校は1学年が4クラスある大きな学校で,5年生全クラス約120人を対象に特別室で1時間30分の講義をした.

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その内容は,世界人口が70億人を突破する中,各国が競って魚をとるようになっていることなどを,世界の漁業現場の写真を交えて紹介するものであった.そして,八木准教授は講義の中で,「世界に向けて広がっている海では,外国と協力していくことが重要で,小学生のみんなも,外国に出かけていって積極的に活躍する人間になってほしいというメッセージが伝わるように,努力した」とのことである.


講師は,大学生相手の講義には慣れているが,今回は大勢の小学生が対象であった.このような長時間,全員で集中力を維持してくれるか少し不安であった.しかし,当日は,5年生の皆さんは大変立派な態度で話を聞くことができており,感心した.また10分ごとに設けた質問タイムでは何十人もの手が上がり議論が盛り上がった.たとえば,講師から,赤潮が発生するとなぜ魚が死んでしまうのか,と難しい質問をしてみたが,「赤潮プランクトンは水面近くでは光合成で酸素を作るが,光が届かない深い水中では光合成ができないため消費する酸素の方が多くなる,従って,そのような深場では酸素は欠乏して魚は生きられない」といった的確な答えが小学生から返ってきて,内心,驚いた.学年主任の赤塚直子先生によれば,事前に5年生全員で海について予習をしていたために知識を持っていたのではないかとのことである.これからもその興味を維持してくれれば前途有望だと感じた.


なお,当日は,日本経済新聞社の羽鳥大介氏も取材に来られ,1時間30分出前授業を聴講された上で,小学生にインタビューをされていた.


出前授業:子供たちに海の研究の最前線を授業


海洋アライアンスは海に関する教育活動の一環として,小中学校や高校などへの出前授業を行っている.2011年10月17日(月),青山潤特任准教授(大気海洋研究所)が千葉県柏市立西原小学校の2年生と保護者を対象に,「海を旅するもの」というタイトルで授業を行った.


魚類や甲殻類の幼生が,親とはまったく異なる姿で海を旅するという話に始まり,保護者から強く要望のあった最新のうなぎ研究へと展開してゆく.


数千キロを旅するうなぎの子供の採集や潜水艇による観察の様子から,耳石を調べて誕生日を明らかにすることまで.まさにウナギ研究の最先端について,美しい写真を交えて説明した.中でも,史上初となった産卵場での親うなぎの捕獲や,卵を採集した際の研究船上での生々しい映像が流れると,子供たちだけなく,後ろに控えた保護者達までもが食い入るように見つめていたのが印象的だった.


結局,40分に及ぶ授業中,低学年ゆえ,途中で騒ぎ出すかも知れないと心配していた校長先生も驚くほどの集中ぶりだった.

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出前授業で使用した資料


終了後には「何でうなぎがいるのか?」など難しい質問もあったが,生徒たちの感想は,「映像が綺麗で水族館に来たみたいだった」,「船で作業している先生達の姿が格好良かった」.また,保護者からは「息子は,授業では手を上げないが,積極的に質問をしていて驚いた」,「うちの子は,水族館や海の生物に興味を持っているので,朝から楽しみにしていました」などなど.親子共々大いに知的好奇心を刺激されたようだ.


今後も海洋アライアンスでは,子供たちに海に興味を持ってもらえるように,最先端の研究内容を含めて色々な事柄を楽しく授業する本活動を続けてゆく.

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授業終了後に生徒からお礼に花束をもらう様子

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後日,生徒たちから届いたお礼の手紙


<東北地方太平洋沖地震・津波への疑問:回答集>


2011年7月14日に行われた海洋アライアンスシンポジウム第6回東京大学の海研究「震災を科学する」にはたくさんの質問が寄せられました.


そこで,質問に対して,各専門科からの回答をご紹介します.


質問文は趣旨を変えないように清書してあります.コメント及び専門的な数式等に関する質問はここでは掲載していません.


<質問> 3.11の地震の連動の仕方及び,津波発生のメカニズムを,もっとわかりやすく説明してください.


<回答:平田直(地震研究所)> 「地震が連動」したというのは,それぞれの地域で別々の地震の震源域があり,それらが同時に破壊されたということを,マスコミ等が説明するときに使われている用語法です.東北地方の太平洋沖のプレート境界では,数百年から千年に一度,南北に400km程度,東西に200km程度の領域が数十メートルずれる現象(M9程度の地震)が発生し,数十年から100年に一度程度の頻度で,数十kmから100km程度の領域が破壊されてM7からM8の地震が起きることが,3月11日のM9の地震が発生することによって分かりました.なぜ,あるときはM9で,あるときはM8やM7になるのかは,地震学界でも議論されていて,必ずしも良く理解されていません.これまでは,アスペリーモデルで説明されていました.アスペリーという,地震の起きていない時は強く固着し,地震時は急激にずれて地震波を放出する領域があり,アスペリティーの大きさ(面積)が,地震の大きさ(マグニチュード)を決めると考えられてきました.3月11日の地震では,複数のアスペリティーが同時に破壊されただけではなく,あるアスペリティーが単独で破壊された時に比べて非常に大きなずれとなった点が,たんなる,同時破壊とは大きな違いです.従来のアスペリティーモデルに,こうした現象を説明できるような修正が加えられています.

 津波の発生について,津波は,海底が盛り上がったり沈下したりすることによって,海面も大きく上下することによって生じます.3月11日の地震では海底が数m上下したことが推定されています.大きな津波になったのは,海底が大きく上下したからで,その原因は,日本海溝から沈み込む太平洋プレート上面の浅い部分で大きな滑りがあったからです.地下の深いところで地震のずれが起きても海底は大きく上下しないので,大きな津波にはなりません.


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<質問> 地震は断層の破壊で震源域は帯状に広いと思いますが,点で示される震源地はどのようにして決まるのですか?


<回答:平田直(地震研究所)> 3月11日の地震は南北400km,東西200kmの広い領域で岩石が大きくずれた(剪断(せんだん)破壊)現象です.破壊は,広い領域で同時に発生するのではなく,一点から発生して広がっていきます.破壊の広がる速さは,およそS波の伝わる速さ(3〜4km毎秒)か,やや遅いものです.「震源」とは,この破壊の開始点のことを言います.破壊が広がる速さより,P波の伝わる速さ(6km毎秒程度)のほうが早いので,最初に観測されるP波は,破壊が開始された位置から放出されたP波です.震源は,複数の観測点でP波やS波の到着した時刻を計測して,三角測量と似た原理によって計算します.ある観測点に最初に到着する波は,最初に破壊された場所から来た波なので,到着時刻から計算される波の放射源は,必ず破壊開始点,つまり震源となります.破壊の広がりは,最初に到着した波より後からくる波を解析して始めて推定することができます.


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<質問> 誘発地震が活発になる地域と,不活発な地域が存在するのは,どのようなメカニズムによるのでしょうか?


<回答:平田直(地震研究所)> 東北地方の太平洋沖のプレート境界では数分間に数十メートルのずれが発生しました.このため東日本全体が東に数m移動し,東北地方では東西に数m,関東や中部地方では北東-南西方向に引き延ばされました.このため,これらの地域の地下の震源断層に加わる力のバランスが変わりました.例えば,福島県と茨城県境界部で発生している地震は,3月11日以前は東西圧縮の力によって地震が起きていましたが,3月11日以降では東西伸張の力による地震が増えました.これまで,東西圧縮の力によって活動していた地震,例えば,2004年新潟県中越地震の余震は,不活発になりました.一方,火山の下の微小地震活動が活発になりました.これは,地殻が伸張場になることによって地下のマグマだまりから放出される熱水成分がより地表に出やすい状態になり,火山の下の地震活動が活発化したと考えられます.伊豆大島,箱根の下でも活発になりました.


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<質問> 断層モデル(パラメータ)設定に限界がある現状では,津波伝播シミュレーションの信頼性はどの程度あると考えて良いのですか?


<回答:古村孝志(情報学環総合防災情報研究センター/地震研究所) 津波シミュレーションは十分な精度を持つ確立した技術ですが,シミュレーション結果は,あくまでも仮定した断層モデルに対する結果ですので,想定とは異なる地震が起きた場合には違ったものになることは言うまでもありません.過去の事例を参考に,かつその場所で起きる可能性のある地震を考えて,適切な断層モデルを設定することは重要な課題です.


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<質問> 東北地方太平洋沖地震の震源域で,北側や南側のすべり量が少ないという逆解析の結果が紹介されましたが,その理由はなぜですか?


<回答:古村孝志(情報学環総合防災情報研究センター/地震研究所) 宮城県沖の日本海溝付近の浅部プレート境界の大きなずれ動き(すべり)に対して,その北側や南側でのずれ動き量が小さかったのは,そこでは100〜300年前に1896年明治三陸地震と1677年延宝房総沖の地震が起きており,現在までに大きく歪みが溜まっていなかったためかもしれません.


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<質問> 深部のみ破壊領域がもとにもどるスピードは,1~3 mm/dayといわれる根拠は何ですか?一時に開放されないのでしょうか?


<回答: 池田安隆(理学系研究科)> 深部の未破壊領域(深度50-100 km)が元に戻るスピードは,地表変形の観測によって推定できます.3/11東北地方沖地震によって太平洋岸の検潮観測所は破壊されましたので,地震後の地殻変動データはGPS観測網によるものです.それによると,東北地方太平洋岸では 1~3 mm/day の速度の隆起が観測されています.これは深部未破壊領域が 2~6 mm/day ぐらいの速度ですべることによって説明できます(配付資料最後のスライド参照).深部未破壊領域で急速すべりが起きない理由は,プレート境界面の物性の違い(主として温度に依存?)にあると考えられますが,詳細は不明です.


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<質問> 東北地方太平洋沖においては,深部地震も津波地震(浅部)もチリ津波も一通り起きたのだから,今後,数十年〜100年位は,大津波は三陸海岸(岩手〜福島まで含む)には来ないという予測は出来ないのでしょうか?もし,100年間大津波が起きないという予測が出来れば,今後100年間(三世代)にわたって,大津波への対策をじっくり進めることが出来ます.


<回答:平田直(地震研究所)> 残念ながら,100年間は大津波が来ないとは言えません.マグニチュード9の地震は宮城県・岩手県沖には今後100年程度は来ないと考えられますが,マグニチュード8程度の地震は今後も発生する可能性はあります.例え,マグニチュード8程度の地震でも海溝付近の浅い所で発生すれば,場所によっては10mの大津波が来ることがあります.さらに,福島県沖では,3月11日の地震でも海溝よりの浅い部分のプレート境界は大きくはずれていないので,大津波がしばらくは来ないと言うことは言えません.


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<質問> 地震や津波の長期的評価は,東北地方太平洋沖地震後,大変難しくなったと思いますが,方針としてどのように考え直されるとお考えですか?

 また,宮城県沖や東海・東南海地震のように,太平洋岸で生じる地震津波は御講演いただきましたが,日本海側ではどのようなリスク評価がなされているのでしょうか?


<回答:平田直(地震研究所)> まず,M9の地震の余震の発生確率は,通常の地震発生確率より遙かに高いので,その評価を行う必要があります.M8やM7の余震が数年以内に発生する確率は,これまでのこの地域の大地震の発生確率の少なくとも一桁は高いでしょう.その上で,M9の地震によって破壊されなかった領域,例えば,福島県沖の沖合の領域や,三陸沖の北側,房総沖,北海道沖などで地震の起きる可能性を評価する必要があります.こうした評価には,3月11日の地震でどこが破壊されたかが重要な情報で,これは,海底での地殻変動の観測データ(海上保安庁)が重要な役割を果たします.

 東北地方の日本海側でもこれまで大きな地震・津波が発生してきました.新潟地震を始めとする地震は,新しいプレート境界で発生した地震であるという学説もありますが,日本海溝や南海トラフのプレート境界に比べて,プレート間の相対速度は小さいので,M9クラスの巨大地震の発生確率は低いです.しかし,日本海中部地震や北海道南西沖の地震のように津波被害がもたらされた地震は発生していますので,今後も警戒が必要です.


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<質問> 地殻に歪みがたまり,その開放が地震ですが,開放されるかずれるかは確率的には予測出来ても,時期を特定することは不可能と聞いています.したがって,地震の予知は永久に不可能と考えて良いでしょうか?


<回答:平田直(地震研究所)> 全ての地震を予知することは永久に不可能です.また,予知ができる場合にも,最終的には確率予測になります.防災上重要な地震と,研究上重要な地震について,それぞれの地震に応じた,発生時期の幅を持たせた予測技術の開発戦略が必要です.現時点では,30年間に発生する確率を示すような「長期予測」が防災上は意味のある段階です.東海地震については,気象庁の想定通りに地震が発生する場合にだけ,予知の情報が防災に役立てることができます.ただし,想定通りになるのがどの程度の確率かは,気象庁にも分かりません.


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<質問> 動物の異常行動と地震の関係は,科学的に認められているのでしょうか?


<回答:平田直(地震研究所)> これまで多くの報告がありますが,科学的に認められている事例は,大変少ないです.動物の中には,自然の電場・地場変化,温度変化,音に非常に敏感なものがあり,もし地震に際して,それらの変化が生じる場合には,異常行動をとることもあります.例えば,人間には感じない小さなP波による揺れや音波を感知する動物は,S波が到着して大きな揺れになる前に,異常行動を見せることがあります.さらに,地震の発生する前に動物が異常行動を示したという報告もたくさんあります.しかし,中規模の地震の頻度は多く,動物が異常行動を示す頻度も多いので,両者の因果関係を証明することは困難です.「疑似相関」と呼ばれる見かけの相関の可能性が高いです.

大地震の前に動物が異常行動を示した例として有名なのは,1975年に中国で起きた海城地震です.この時には,本震に先立ち大きな前震活動がありました.通常は地震のほとんど無い地域で,活発な前震活動が発生することによって,動物に影響があったことは十分に考えられます.しかし,地震によっては全く前震活動を伴わないものもあることに注意してください.


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<質問> 地震発光について言及されていたが,どういった自然現象として説明されているのでしょうか?また,ほかに記述されている例はありますか?


<回答:保立道久(史料編纂所)> 地震発光を明瞭に示す最初の史料は,ご紹介した貞観津波(陸奥沖海溝津波)の史料です.

 この物理的な実態がどのようなものであるかについては,自然科学の方がお答えになった方がよいと思いますが,大規模な断層の発生にともなう地磁気異常であるという説が説得的であるように思います.もう一つは断層によってメタンハイドレードが大量に空中にでるというもので,これは可能性の指摘にとどまっているように思います.

 ほかに記述されている例については,武者金吉さんの大著「地震に伴ふ發光現象の研究及び資料/武者金吉編著」(岩波書店,1932)があります.

 なお,講演でも言いましたが,さらに古い史料としては,オオクニ主ミコトの変身した神とされる大物主神が「海上を照らしながらやってきた」という『古事記』の叙述は,大物主の津波の神という性格を示していると,私は,考えています.

 なお,講演の一定部分は,「季刊東北学」(28号)という雑誌に,貞観津波と大地動乱の9世紀として執筆しましたので御参照いただければ幸いです.


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<質問> 仙台市内の建物内にいて,3.11の地震を体験しました.約3分程度の揺れの中で,3回ほど揺れのほかに衝撃を感じました.これはどういう現象と理解すればよいのでしょうか?


<回答:平田直(地震研究所)> 3月11日の東北地方太平洋沖地震では,震源断層での破壊(ずれ)が約3分程度続きました.この間,破壊領域は,東西方向と南北方向に移動して,強い揺れのエネルギーは数回に分かれて放出されました.建物で感じる揺れは,通常は横波(S波)による「ゆさゆさ」としたものですが,縦波(P波)が強いと下から「ずどん」という感じで揺れます.仙台は震源から近いので,P波の揺れを感じたのではないでしょか.


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<質問> 津波では,第一波の上に第二波が重なってくる映像を見ました.また,茨城沿岸では南から来た波もあったといわれています.この現象を説明してください.

 今回の津波はなぜ10 mを大きく越えることになったのでしょうか?


<回答:古村孝志(情報学環総合防災情報研究センター/地震研究所) 津波の第一波は震源域から直接到達しますが,第二波以降には,遠くの海岸などで反射した津波が別の方向から到達します.震源域から離れた場所では,第一波は小さいのに,大二波以降がより大きな津波となることがよくあります.

 先の回答にありますように,3月11日の地震では海底が数m上下したことが推定されています.こうして生まれた数mの津波が沿岸に近づくと波高が何倍にも増幅され,巨大津波となったのです.


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<質問> 津波は波であるが陸に近づくと固まりで移動するものになるという.それはどういうメカニズムですか?


<回答:中埜良昭(生産技術研究所)> 波浪も津波も,「波」には違いはありませんが,前者の波長が数m〜程度であるのに対し後者は数km以上にもなり,そのため人から見ると水の盛り上がった部分が延々と続くことになるため,「水そのものが移動してくる」とか「水の固まりが移動してくる」ように津波は見えるわけです.ただ地球規模でみると,初めにも述べた通り波長が異なるだけで,どちらも「波」に違いはありません.


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<質問> 阪神,中部地方には,特に大規模産業集積地があり,沿岸の人口密度も高いですが,これらの地域及び物理的産業基盤を津波から守ることは日本だけでなく,世界的にも大切です.理学系研究者の立場から,時にこれらの地域の「ハードによる防災」に対して,アドバイスをお願いします.


<回答:平田直(地震研究所)> 適切な津波高の評価を行い,津波に対する防御をする必要があります.産業基盤を守るためには,ハードによる防災が必須ですが,一方,ハードによっては防御できない津波の来る可能性も考慮して,危険分散などの危機管理が必要と思われます.


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<質問> 今回の地震・津波において"防潮堤のある程度の効果"についてはいろんなところでいわれていますが,"防潮林"はどうだったのでしょうか?陸前高田では一万本の松林が一本残すだけのすごい力でしたが,少しは津波のエネルギーを抑えてくれたのではありませんか?もし,具体的な調査事実があれば教えてください.

 スリランカではヤシの木や,マングローブ林を伐採してエビ養殖池にしてしまったため津波の被害が大きかったという話もあったと記憶しています.ただ,マングローブ林も場所によっては効果が無く,海岸地形も考慮する必要があるようですが,スリランカに行って防潮林について考えたこと感じたことを教えてください.


<回答:中埜良昭(生産技術研究所)> 防潮林の効果は,あるという話もありますし,あまりないという話もあるようです.直接定量的な調査はしておりませんが,例えば仙台平野沿岸では防潮林の背後にあった住宅が,被害は受けているものの残存している事例も見られました.

 ただし,このような効果が期待できるかどうかは,防潮林の有無だけでなく,どの程度の高さの津波が来襲したかとも大きくかかわることであり,例えば15mといった巨大な津波の場合には余り防潮林の効果は期待できないと思います.


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<質問> 一つの建物の耐力だけでなく,津波に対する複合対策の一つとしてビル群として津波の流体力を減ずるというような形で,都市構造に反映するという考え方は出来ないのでしょうか?


<回答:中埜良昭(生産技術研究所)> 今次の津波災害のような大規模な津波に対しては,建築物単体で防御するには明らかに限界があると考えます.津波の波力を減衰させる津波防波堤だけでなく,陸上にも津波の波力を減衰させる構造物を設置し,いわば合わせ技で津波防災を実現してゆく,これまでにない考え方が必要でしょう.ご指摘のように,都市計画の中に津波防災効果を組み込んだ開発,モデル地区の提案・実現が大変重要であると感じています.


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<質問> 防潮堤の破壊について,どのくらいの力が加わったのですか?流速との関係があると思いますが,流速はどれくらいでしょうか?


<回答:中埜良昭(生産技術研究所)>   陸上の建築物を対象に調査をしてきたので直接的なデータを持っていませんが,建築物の被害状況の分析結果によると,防波堤などの津波を遮蔽する効果のあった地域では流速4〜6m/s程度,効果のなかった地域では10m/s程度,また波圧は前者で15〜30kN/m2,後者で85kN/m2以上との推定結果があります.流速に関する数値は,ビデオの記録映像ともおおむね整合しているので,波圧についてもそこそこ実態を表す数値であろうと考えています.もちろん場所によって我々の調査結果が適用できない場所もあるでしょうが,作用力のオーダーとしては防潮堤においても上記程度ではないかと推察します.


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<質問> 今回の震災による経験・知見が,今後の防災,特に,国の計画(中防会議)の被害想定(防災計画)に与える影響の主なポイント,変更点はどのようなものでしょうか?

 また,それにはどれくらいの時間を要するのでしょうか(段階的だとしても)


<回答:古村孝志(情報学環総合防災情報研究センター/地震研究所)> 3月11日の震災を受け,国の中央防災会議では専門調査会を開催し,5月26日から週1回のペースでこれまで12回の集中審議が行われ,9月28日に最終報告書がとりまとめられました.今回の地震津波被害の特徴と検証,防災対策で対象とする地震津波の考え方,津波対策の方向性,今後の課題など,以下の報告書をご覧ください.

http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/higashinihon/index_higashi.html

 また,中央防災会議では,南海トラフ巨大地震の震源モデルの見直しのための,検討会が引き続き進められており,年内に中間報告書がとりまとめられる予定です.


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<質問> 今後50年程度の間に,東海,南海,東南海地震と津波の起こる確率はどの程度と考えればよいのですか?


<回答:芦寿一郎(新領域創成科学研究科/大気海洋研究所)> 政府の中央防災会議により発生確立は見積もられています.最新の値は中央防災会議のホームページをご覧下さい.

http://www.bousai.go.jp/chubou/chubou.html


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<質問> 東海〜南海地震で,マグニチュード8クラスの繰り返し間隔とマグニチュード9クラスの繰り返し間隔は,同じ様な物理で発生すると考えていいのですか?


<回答:芦寿一郎(新領域創成科学研究科/大気海洋研究所)> マグニチュードは破壊の領域が複数にまたがるかどうかで決まりますが,地震発生のメカニズムは同じであると考えられます.しかし,破壊の範囲を決める原因についてはまだ良くわかっていません.


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<質問> 付加体が南海トラフにあって,日本海溝にない理由はなぜですか?


<回答:芦寿一郎(新領域創成科学研究科/大気海洋研究所)> 付加体の発達は,主に海溝や沈み込むプレート上の土砂の付加により行われます.南海トラフでは富士川等からの土砂が大量に海溝へ供給されているのに対して,日本海溝の多くの地点では海溝底まで土砂がほとんど供給されていません.日本海溝では沈み込むプレート上の堆積層も薄く付加はあまり起こっていないようです.なお,日本海溝の陸側斜面の先端部には,付加体状の構造が見られますが,ここでは付加と地すべりの繰り返しが行われているとみられ,むしろ沈み込むプレートの凸凹による侵食を受けていると考えられています.


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<質問> ネイチャーで「日本海溝はGPSでここ10年固着していた」という記事がありましたが,今回の地震では日本海溝はどのくらい動いたのでしょうか?

 また,日本海溝の海溝底堆積物はどのように乱されたのでしょうか?


<回答:芦寿一郎(新領域創成科学研究科/大気海洋研究所)> 海上保安庁海洋情報部によるGPSと音響測距を組み合わせた海底測地観測では,震源のほぼ真上と40km陸側の地点でそれぞれ24mと15mの東南東方向への移動が報告されています.また,東北大学の観測では震央の東方約45 kmの地点で31mの同方向への移動が得られています.さらに東北大学の圧力計による観測では,震央から約100km東の海底で5mの隆起が報告されています.このほか,海洋研究開発機構による地震前後の海底地形の比較では,海溝陸側斜面の先端部で約50mの東南東方向への移動が推定されています.

 地震後の海底の様子は海洋研究開発機構によって観察されており,海底に割れ目の発達が確認されています.


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<質問> 大震災時の水供給に備え,日常から雨水貯留・利用の施設を整備しておくことに不足はないですか?どのような備えが必要ですか?


<回答:福士謙介(サステナビリティ学連携研究機構)> 意義があります.実際,東京都などでは公園等に防災用水としての水の貯留,独立で作動する地下水の利用施設(谷中コミュニティセンター向かいなどにあります)が整備してあります.しかし,そのような水は一部を除き,そのまま飲料水としての利用は難しいし,量的に圧倒的不足すると思います.人間が生きるためには2リットル程度の水が毎日要り,公的な水の供給がくるのは最大で3日間後ですので,一人あたり,6リットルの飲料水は最低でも各家庭に確保が必要と思います.公的に大量の水を確保することは難しく,各家庭での備蓄,雨水の利用などのシステムも整備することが重要かもしれません.雨水利用に関しては災害と言うよりは都市の新たな水資源として利用する動きが世界的にあります.Rain water harvestingといいます.


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<質問> 津波の被害は主に陸に遡上した海水が構造物にぶつかって発生します.一方,津波の研究は発生(地震学),伝播や遡上(海岸工学),構造物への影響(構造学)とばらばらに行われており,全体を統一的に見てものがいえる専門家が少ないように思います.東京大学で,統合的な知識を持った専門家を育てることはしないのですか?


<回答:平田直(地震研究所)> ご指摘の観点は重要です.残念ながら現在の学問の体系では,理学(地震学)と工学は別の学部(研究科)で教えられています.東京大学では,災害情報については,大学院 情報学環 総合防災情報研究センターで,理学の地震・津波学と災害情報学を統合した研究・教育が行われています.しかし,海岸工学や建築・土木などの社会基盤関係の研究・教育との連携は,現時点では不十分です.


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